第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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、肘を曲げて、細かく小さな拍手をした。
「なら、ついでというか、もっとドキリと心が乱れるようなものを、見せてあげようか?」
低い、甘い声でそういうと、至垂は、自分のグレーのスーツに手を掛けた。
上着を、脱ぎ捨てた。
「え……」
なにを、しようとしている?
警戒怠らずも、不思議そうに小首を傾げるアサキ。
治奈も、同じような表情で見守っている。
リヒト所長、至垂徳柳は、視線をまるで気に留めず、いや留めているからこそか、鼻歌混じりに、シャツのボタンを一つひとつ外していく。
シャツを脱ぎ捨て、上半身がベージュのインナーだけになると、今度は、ズボンに手を掛ける。ベルトを外す。
「なにをしているんですか! ふ、ふざけるのはやめて下さい!」
アサキは顔を真っ赤に染め、声を裏返して叫んだ。
恥ずかしげな表情を、ぷいとそらせた。
こんな時であるというのに、あまりの恥ずかしさに、アサキはドキドキする胸を押さえ、ぎゅっと目を閉じてしまっていた。
分かっている。
そんな場合ではないこと。
より丸腰になるというなら、これ好都合と捕らえてしまえばいいだけなのに。
「そそ、そむけとる場合じゃないじゃろ!」
治奈の声。
それは自分への言葉かとアサキは思ったが、そうではなかった。
彼女もまた、アサキと同じように恥ずかしさに顔をそむけており、自身を叱咤していたのだ。
「こ、これは、え、ええっ。……アサキちゃん!」
続いて、おそらく目を開けて正面を見たのであろう、治奈の上擦った声。
アサキは真っ赤になった顔を再び至垂へと向け、ぎゅっと閉じていた目を薄く開いた。
薄目が、疑惑と驚愕に、一瞬にして大きく見開かれていた。
信じられない光景が、目の前にあったのである。
ぽかん、と口を半開きにしているアサキと、治奈の前で、至垂徳柳が、身に着けた最後の一枚である、白い下着を脱いだ。
一糸纏わぬ、至垂の姿。
身体の、微妙な隆起。
生まれて初めて見てしまう覚悟を決めたと思ったら、想像したところには想像のものはなにもなく。
「女……」
ごくり、
アサキは呆けた顔のまま、唾を飲んだ。
喉の奥が乾いてしまって、へばりつく感じで上手く飲み込めなかったが。
羞恥か打算か分からないが、本当は隠して置きたかったという気持ちもあるのだろうか。
二人の驚いた顔に、全裸の至垂徳柳は、満足げな、でも少し陰りのある表情で、唇を歪めた。
「こんな女が、いると思うかい? 普通に考えて」
至垂は問う。
ボディビルを本格的に打ち込んでいるならば、いなくもないだろう。
隆々とし
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