第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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、捕らえなければならない。
もし逃してしまったら、フミちゃんがどうなるか分からない。
このように、戦いになってしまった以上は。
それに、このような場を、もし第二中の子たちに見られでもしたら、どうなる?
ただでさえ、万さんたちを殺されて、怒り狂っている彼女たちだ。なにがどうなってしまうか、分からない。
もちろんわたしだって、この人がしたことは許さない。
許してはいけない。
でも、だからこそこの人は、厳粛な、公平な中で、裁かれるべきだと思うから。
それを優等生発言だなんだ、甘いだなんだ、笑うなら笑え。
でも、
なんだろう、この人の、表情は。
笑って、いる?
そう、絶望しないアサキに対して激怒狂乱していた至垂であるが、その顔に、また、他人を見下す笑みが浮かびつつあったのである。
「やっぱり身体を動かすと、ストレス発散になるのかなあ。気持ちが、落ち着いてきたよ。さあどうしようかなあ、と楽しくなってきたよ」
赤毛の少女の、表情から感情を見抜いたのか、至垂がさわやかにいいながらも、いやらしく唇を歪めた。
「強がりはやめて、諦めて、おとなしくして下さい。罪を、償って下さい」
「罪を償うもなにも、無数の罪を身に宿しているのは、むしろきみの方だろうよ」
「違う!」
確かに、記憶はある。
世に絶望し、世を呪い、たくさんの人を殺して、自害して果てた記憶など。
もし、それも含めてわたしだというなら、生きて、過去の記憶を浄化していけばいいだけ。
確かに、否定すべき過去も未来もあるかも知れない。
でもそれは、つまらない人のつまらない言葉に踊らされて、するものではない。
「はあ、開き直るんだなあ」
手刀、拳、蹴り、突き、手数勢いを、一切弱めることなく、至垂は器用にため息を吐いた。さわやかに、身体を動かしながら。
「さっきあなたは、わたしの考えている家族の絆に対して、詭弁といった。でもわたしにとっては、あなたが語っている罪のことこそが、詭弁だ」
突きの嵐を弾き、跳ね上げ、巧みに受け流しながら、赤毛の少女は、言葉での反撃をする。
反撃というよりは、自分の思いを固めるための、自分への言葉といった方が正しいだろうか。
「作り物、動く人形に、家族の絆などあってたまるかよ」
至垂徳柳は、鼻で笑った。
「そう思うなら、それでも構わない」
わたしはわたしだ。
なにがあろうとも。
なにをいわれようとも。
「作り物であろうと、なかろうと、家族の絆を知らない人間の方がかわいそうです」
「相容れないねえ。……一つ聞かせようか、わたしが生まれた意味、存在理由を。まあ所詮きみは道具だし、理解出来るはずもないかな
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