第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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らせているのだ。
次の、瞬間であった。
ガツ、
と骨を打つ鈍い音がし、アサキの身体が後ろへよろけ、壁に背をぶつけたのは。
至垂徳柳のごつごつした拳が、アサキの頬を、容赦なく殴り付けたのである。
殴り付け、そして怒鳴り声を張り上げた。
「わたしをヴァイスタにするつもりかあああああああああああああああ!」
ままならなさによる絶望をさせる気か。ということであろうか。
身勝手な理屈である。
アサキが合わせねばならない道理はない。
打たれた頬を押さえながら、アサキは顔を上げた。
きっ、と睨み返した。
睨みながらも、どこか慈悲のある眼差しで、小さいながら、はっきりした声で、こういった。
「わたしが願うのは、誰も、魔法使いの女の子が誰も、ヴァイスタなんかにならない世界だ」
8
突き出される、拳。
怒りの粒子を含んだ、風、風圧。右、左。
冷静に腕を絡め、空手の受け身をするアサキであるが、受けた瞬間、密着した状態から、素早く踏み込みながらのローキックがきた。
足を軽く上げて、威力を散らす。
散らした瞬間には、顔、上半身が、無骨な拳の連打に襲われていた。
「やめて下さい!」
アサキは後ろへ下がりながら、手の甲で拳を弾き、頭を下げて拳をかわす。
「うるさい! うるさい! うるさい!」
ガムシャラに振り回される、至垂徳柳の手、腕、脚、足。
盲滅法に見える割には、攻撃は素早く、戻りも素早く隙がなく、アサキは避けるに精一杯だった。
狂った勢いに押されているというだけであり、まともに受けても、たいしたダメージではないのだろうが。
自分は、続く戦闘にダメージを蓄積させているとはいえ、魔道着を着ているし、対し相手は生身であるからだ。
至垂徳柳は、男性であるが故に、魔法力など微塵ほどしかないだろう。
魔力は身体能力を強化させる。
つまり、アサキに勝てるはずがないのだ。
魔道着により魔力伝送効率のアップしている女性に、男性が肉弾戦で勝てるはずがないのだ。
以前にアサキ自身が、「超魔道着を着た魔法使いの女性(慶賀応芽を、生身で倒す」という、離れ技の前例を作ってしまったわけではあるが、でもそれも、魔力の器が途方もないから出来たこと。
魔道着関係なく、そもそも魔力を持たないに等しい男性など、現在のアサキにとって相手ではない。
ではあるものの、気持ちとしては、その気迫というか狂気というか、完全に飲まれてしまっていた。
それと、至垂徳柳の格闘術が、相当に鍛錬されたもので、攻撃に休みがなく次から次で、怪我させずに彼を捉えたいア
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