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魔法使い×あさき☆彡
第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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てを、喜悦という感情へ集結させた。

 だが、そのねじくれた喜悦も、長くは続かなかった。

 彼にとっての想定外。

 床に崩れていた赤毛の少女、アサキの、震えがとまっていた。
 赤毛の少女、アサキは、ゆっくりと、立ち上がっていた。
 ゆっくり立ち上がって、静かに顔を上げた。
 顔を上げると、小さな声ながらも、毅然とした顔を向けた。
 グレーのスーツ、リヒト所長へと。

「わたしを思う人たちが、いてくれることを。そんな、小さいけれどなによりも大きな幸せを、わたしは、思い出しました」

 そういったのである。
 言葉こそ少ないが、確固たる意思の主張であった。

「アサキ、ちゃん……」

 泣き出しそうであった治奈の顔に、変化が生じていた。
 いや今でも泣き出しそうではあるものの、目尻に溜まっていた涙の、その質や意味合いに、明らかな変化が生じていた。
 同じ涙で、あるはずなのに。
 堪えきれず、ぼろり、こぼれた。
 その、自らの流した暖かな涙を、治奈は、指でそっと拭った。

 空気正反対は、至垂徳柳である。
 作った笑顔の片頬を引きつらせたまま、ロウ人形のように、完全に硬直していた。

 十秒ほど、経過した頃だろうか。

「え」

 引きつった笑顔から、ようやく声が漏れたのは。

 身体が、微かに震えている。
 指先が、微かに震えている。
 見れば気付くという程度であったのが、あっという間に、遠目からでもそれと分かる激しい震えになっていた。
 脆い床なら崩れておかしくないほどの。
 笑みもすっかり消失し、表情の半分は、うつろ。
 残り半分は、
 怒り、
 焦燥、
 疑惑、
 不安、
 負の感情をすべてごっちゃにした、そんな顔になっていた。

 ぶつっ、ぶつっ

 なにかが切れる、音がしている。
 実際に、切れていた。
 グレースーツの男のこめかみに、触れば分かるくらい血管が浮き上がっており、そこから血が流れて伝い落ちていた。

 髪の毛が、逆立っていた。
 半分前へ垂らして残りを後ろへ流し気味に固めている髪の毛であったのが、すべて逆立っていた。
 毛の小さく絡んだ束が、一束、二束、ぶつり、ぶつりと切れては、床へと落ちた。

 ふーーー
 ふーーーー

 項垂れているリヒト所長の口から、蒸気が噴き出しているかと間違えそうな息が漏れていた。

「なにかな、そのあくまで前向きな振りは……ヘド出る優等生発言は」

 首を下げたまま、拳を握った。
 そっと、ではない。
 どれほどの力がこもっているのか、爪が食い込んで、血が滲み出ていた。
 ぽたり一滴、床に滴った。

 ぎょり

 ぎょり

 耳を覆いたくなる不快な音。
 歯を軋
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