第四十七話 思わせぶりな態度その三
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「そうかも知れません」
「そうですか」
「そう思うと面白いですね」
「はい、とても」
実際にとだ、咲は速水に明るい笑顔で応えた。
「そうですね」
「ではその様に考えられますか」
「そうします」
またしても明るい顔で応えた。
「面白いですから」
「それでは」
「そうします、ただ」
「どうしましたか?」
「東京は魔都なんですね」
咲は速水が言ったこの言葉について考える顔になって述べた。
「そうなんですね」
「私が思うところです」
「繁栄と退廃が共にある」
「それでいて寛容でかつ魅力に満ちた」
「魔都なんですね」
「勿論聖もあります、しかし聖と同じだけです」
「魔もあるんですね」
「善悪とは別に。実は魔といっても悪ではありません」
速水はそれは否定した。
「人から見て善である場合もあれば」
「悪である場合もありますか」
「そうです、尚妖怪よりも遥かにです」
「妖怪よりもですか」
「人間の方が恐ろしいものです」
「怨霊ですか」
「これが最も恐ろしいです、東京にも多いので」
怨霊はというのだ。
「私はこう申し上げます」
「怨霊が一番怖いですか」
「魔と言っても妖怪や妖精はそれぞれで」
個々の性格によるというのだ。
「鬼や天狗もです」
「怨霊よりはですか」
「例え邪な心を持っていても」
鬼や天狗がというのだ、鬼と言えば悪と思われるがよく調べると決して悪とは
言えない鬼も存在しているのだ。
「怨霊の方がです」
「恐ろしいですか」
「天使や悪魔の様にそれぞれの世界の規律もなく」
そうしてというのだ。
「ただ怨念のみがある」
「その怨念が怖いんですね」
「そうです、ですから」
「怨霊が魔の中で一番問題ですか」
「本朝は怨霊を鎮める為に腐心してきています」
「今もですか」
「靖国神社ですが」
速水はここでこの社の話に入った。
「これまで戦争で亡くなった人達が祀られていますね」
「英霊の人達ですね」
「護国の鬼となられて」
「日本を護ってくれていますね」
「そうです、この場合鬼とは幽霊ですが」
「中国では鬼は幽霊でしたね」
「ですから閻魔帳を点鬼簿と言います」
そして死ねば鬼籍に入ると言われるのだ。
「そうした意味です」
「日本の鬼ではないですね」
「角を生やしたあの鬼とは違います」
「幽霊ですね」
「そうです、その方々を祀っていますが」
「戦死した人達の魂ですね」
「その方々が今もあの社におられてです」
そうしてというのだ。
「祀られていて」
「日本を護ってくれていますね」
「戦死されても。だからこそその想いはです」
「強いですか」
「ですから下手に貶めますと」
その時はというのだ。
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