第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その1
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うなると、中近東に植民地を持たない日米のどちらかが、金を出すことになる。
だから、俺もすこしばかり小銭稼ぎがしたくて、シリア大統領にアポを取りたくなったのさ」
憤懣遣る方無い表情のアベールを、じろりと睨み返したマサキは、意味ありげな哄笑する。
「フフフ、俺の頼みを、嫌とは言わせん。
貴様等が、ドレスデンでパレスチナ解放人民戦線の幹部を訓練していたことを俺は知っている。
KGBの命令で、シュタージが関わった国際テロ事件の全貌を、白日の下に晒してやる」
満面に喜色をたぎらせ、興奮する面持ちのアベールを嘲笑って見せた。
パレスチナ解放人民戦線とは、1967年に「パレスチナ解放機構」(PLO)の傘下として、パレスチナ・ゲリラ極左組織を統合して作った団体である。
シリアとレバノンに拠点を置き、暴力によってパレスチナ解放を進める極左テロ集団。
彼等の目的は、「破壊活動によってパレスチナ問題を世界の関心を集める」という過激な物であった。
ソ連KGBの支援を受けたテロリストによって引き起こされたエル・アル航空426便ハイジャック事件や同時ハイジャック事件が夙に有名であろう。
さすが議長も、カッと逆上するのではないかと、みな、目をこらして、議長を見まもっていた。
けれど、議長は、マサキの嘲笑を浴びると、自分も共に、その面に、うっすらと苦笑を持って、
「貴様……何故その様な事を」
「そんなに秘密が聞きたいのか……いいのか、俺の心ひとつでゼオライマーは自在に動かせる。
ベルリンの共和国宮殿はおろか、東ドイツを廃墟にすることも簡単だ。
そんな力を持つ、この俺を止めているのは、はかない少女の真情だけだと言う事を忘れるな」
「脅しているのかね」
「取引だ。そんなちゃちな革命野郎の件で、俺の夢を道草させるわけにはいかんからな」
マサキは、怯みもなく言った。
「まあ、よい。シュトラハヴィッツでもいい。
あの空軍出身のハーフィズ・アル=アサド大統領とコンタクトを取りたいと、シリアに伝えてくれ」
シュトラハヴィッツは、やや重たげに、マサキに返した
「俺も、アサド将軍とは知らぬ仲ではないが……」
その声は、低すぎるくらいで、声の表に感情は出ていなかった。
話は、1956年のスエズ動乱の頃にまでさかのぼる。
エジプトで、1952年に軍事クーデターで政権掌握した自由将校団は、親ソ容共思想を前面に押し出す団体であった。
1953年の革命以来、米軍からの武器援助を断られたエジプト軍は、チェコスロバキアから最新の自動小銃を、ソ連から最新鋭のジェット戦闘機の貸与と訓練を受けた。
当時、エジプトとの合邦を進めていたシリアも、また、1957年に訪ソ将校団を結成し、最新鋭ジェット戦闘機、MiG-1
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