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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その1
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れを良しとしない人間たちが居たのだ。
 ソ連をはじめとする共産主義勢力であり、また国際金融資本の面々であった。
1973年のBETA戦争により結束をした中近東を分裂させ、紛争による漁夫の利を得るために、宗教的、民族的に不安定なレバノンが狙われたのだ。
 

 中近東に関するソ連と国際金融資本の動きを察知したマサキは、単身、ゼオライマーで動く。
東ドイツに乗り込んで、ベルリンの共和国宮殿で、議長や政治局の幹部達と面会をしていた。
 マサキは、開口一番、議長に向かって驚くべき発言をした。
「貴様の力を貸してほしい。中東の大国、シリアの大統領と連絡を取りたい」
マサキの無体な要求に、議長は凍り付いた。
会議室に居ならんでいる顔、顔、顔……のすべては、みな、にがりきってマサキを見すえていた。
 無茶にも程がある。
シリアと友好関係がある東ドイツの議長に対して、こんなにまで無遠慮に頼み込む者がほかにあるだろうか。
幹部達は、マサキの正気をさえ疑って、ただあきれるのみだった。
 このとき、ついにたまりかねたように、幹部のうちから、アベール・ブレーメが、
「君は、自分がしようとしている事が判っているのかね。
本当に、西側の人間とは思えないようなことをいうのだな」と、言った。いや叱った。
 マサキは、ほんのこころもち、その体を、SED幹部たちのほうへ向けかえて。
「BETAの影響が薄まった今、西側の資本家の狙いは、中近東でのソ連の影響力を削ぐことにある。
アラブ民族主義で大分油田などを国有化されてしまったからな。
奴等はこのBETA戦争の復興の名目でアラビア半島に乗り込むのは必至」
そう言って、妖しく光る眼差しを議長に向けた。
 
 1946年にフランスから独立したシリア共和国は、数度の政変の後、東側陣営に近づいた。
1950年代のスターリン時代の末期からソ連の親アラブ政策によって、資金援助を受け、社会主義政党のアラブ社会主義復興党(通称:バース党)が実権を握った。
 東側陣営であるシリアは、対トルコ、対イスラエルの要として軍隊の近代化を図り、一定の影響力を持つ大国でもあった。
 マサキは、パレスチナ・ゲリラを支援しているシリアに近づく姿勢を見せれば、必ずイスラエルが動くと踏んで、敢て東ドイツの首脳部に頼み込んだのだ。
 だが、東ドイツ首脳部も馬鹿ではなかった。
前議長のホーネッカー時代に、KGBを通じてシュタージが、中東のテロ集団を支援していた事実が明るみに出れば、アベールが苦心して考えた経済開発の計画も、EC加盟の道筋も水泡に帰す恐れがあった。
「どちらにしても、中東におけるソ連の影響力を削ぐのに、まずエジプトか、シリアを西に引き込む必要がある。
西側資本による、シリアの経済開発が始まるのは時間の問題さ。

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