第四十六話 夏服を着てその九
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「けれどね」
「土蜘蛛や鵺は都の中にいたので」
「中にいる魔もね」
「退けていたんですね」
「魔は外からも来るけれど」
「内にも起こるんですね」
「だから内のことも考えて」
そうしてというのだ。
「結界もあるよ」
「そうですか、ただ京都のお話を聞いてですけれど」
咲は部長に怪訝な顔になって話した。
「内の魔を退治する」
「安倍晴明さんや源頼光さんですね」
「そうした人達は江戸、東京にもね」
「いたんですか」
「今もいるんじゃないかな」
「そうですか」
「こう言うとオカルトだけれど」
それでもというのだ。
「あるんじゃないかな、本当に東京は結界の塊だから」
「そうした街だからですね」
「もうそうした人達もね」
「現実にですね」
「今もね」
「いるかも知れないですか」
「僕はそうであっても驚かないよ」
部長は咲に真顔で話した。
「世界中にその話があってね」
「日本にもあって」
「東京は特にね」
まさにというのだ。
「そうした話が一番有り得る」
「そうした街ですか」
「こんなに災厄の多い街はそうそうないし結界が多くて」
そしてというのだ。
「変なお話もね」
「多いですね、そういえば」
「東京って怪談も多いね」
「よく聞きますね」
「本所七不思議もあって」
送り提灯やおいてけ堀等だ、江戸時代に話題になった今で言う都市伝説と言っていい話であり今にも伝わっている。
「その他にもね」
「多いですね」
「やっぱり人が多くて歴史があるから」
「江戸時代から」
「それだけにね」
「怪談も多いですね」
「妖怪のお話もあって」
そうしてというのだ。
「特に幽霊のお話がね」
「多いですね」
「そして怨霊もね」
「ありますね」
「ちょっと言ったら駄目だけれどね」
「言えば本当に祟られますね」
「怨霊も強いとね」
それならばというのだ。
「魔王と言っていいから」
「そこまで強いんですね」
「だからね」
「迂闊にお話したらいけないですね」
「お話するだけでもね」
ただそれだけでもというのだ。
「凄くね」
「危ないですね」
「だから怨霊の話はね」
「東京の怨霊と言えば、ですね」
「特に怖いのが二つあるね」
「はい」
このことは目でやり取りをした、部長も咲も東京の人間なのでこの辺りはそれでわかることだった。
「本当に」
「だからあえて言わないけれど」
「その二つのことはですね」
「言わないことだよ」
絶対にというのだ。
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