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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
魔法絶唱しないフォギアG編
彼の弱点を探れ
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怯えた目でこちらを見る透。いや、よくよく見ると透が見ているのは颯人が持っている鼠だった。
「…………」
試しに颯人は鼠を右へ動かしてみる。すると透の怯えた目もそれを追って右へ動く。左へ動かすと左に、上に下にと透の怯えた目は鼠を追い続ける。それは鼠に興味があるからと言うより、目を話す事も怖いから目が離せないといった感じだった。
時々クリスの背に完全に隠れながらそれでも伺うように顔を出す事がそう思わせる。
流石にここまでのものを見せられては、颯人だって気付く。
「……透って鼠苦手なのか?」
「…………悪いかよ」
「いや別に悪くはないけど……なぁ?」
「確かに。何て言うか、意外だなぁって」
「透君にも苦手なものがあったんだね」
「うむ。雪音の為に体を張れる北上が、まさか鼠が苦手だったとはな」
「色々あったんだよ」
クリス曰く、何でも子供の頃に透は実家の屋根裏でとんでもない大きさの鼠に襲われ、それ以来鼠を見るとその時のことが思い出されるくらいのトラウマになってしまったのだそうだ。
因みにこれは子供時代の誇張したイメージが定着してしまっただけである。
詳しく当時の事を話せば、子供時代の透が出会ったのはただの鼠である。確かに普通の鼠に比べれば大きかったが、精々が通常の鼠よりもデブだという程度で言うほど大きくはない。それでも子供目線で見れば信じられない大きさなのだろう。
更に言えば、鼠は別に透に襲い掛かっても居なかった。当時の状況を説明すれば、透は暗闇から出てきたデブ鼠に大層驚いたが、実は鼠の方も突然透と遭遇した事にパニックを起こしており驚きのあまり後先考えず前に飛び出していった。デブ鼠の大きさに驚いていた子供の透は、それを大きな鼠が自分に襲い掛かって来たと感じ叫び声を上げながら逃げ出したのだ。
その時の事があり、透は未だに鼠が大の苦手なのだった。
事実透は怯えた目で颯人の手の中の鼠を見ている。小動物の様に怯える透。その姿に颯人はいたずら心を刺激されたが、流石に鼠を嗾けると言う可哀想な事はしない。回収した鼠を颯人は帽子の中に放り込む。
これで一安心…………と思っていたのだが、颯人はある事に気付いてしまった。
「あ、透……」
「?」
「ポケットにすっぽり」
最初、透はそれが何のことなのか分からなかった。だが自分の服の胸ポケットで何かが動く感触に恐る恐る視線を下に向けると、そこには胸ポケットから顔を出して見上げている鼠の姿が――――
「!?!?!?!?!?」
「うおっ!?」
その瞬間、透は椅子を薙ぎ倒しながらひっくり返り上着を脱ぎ棄てて逃げた。声の出せない透の口から颯人達は声にならない悲鳴を聞き、透は椅子やテーブルをひっくり返して鼠から距離を取る。
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