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DOREAM BASEBALL 〜夢見る乙女の物語〜 
用意される明日
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際どいコースとは言えないほどのところにストレートが投げ込まれ、リュシーはこれを見送り1ストライク。

「危なっ……」
「打たれたら一溜まりもないですよ、今のは」

真ん中付近のボールに肝を冷やした彼女たちはそう言葉を漏らす。しかし、町田と真田の見解は違った。

「今のはあれでいいんだよ」
「どういうことです?」
「どんな強打者でもほぼ確実にストライクを取れる方法と言えば?」
「……3ボールからのストライク?」
「そう。しかもあれだけ大きく外れたボールが三つも続いたら制球が定まらないか勝負を避けてるかと考えるのが普通だからな」
「試合も終盤。しかもランナーがいる上に長打が出たら試合終了。その場面であんな投球されたらどんなバッターでも見送る」
「リュシーは早いカウントでもお構い無しに振ってくるからな。まずファーストストライクを取るための苦肉の策だろう」
「でも……ここからボール球を使えないんじゃどっちみち勝負できないですよね?」

その問いには二人の反応が別れた。町田は頷いたのに対し真田は首を振ったのだ。それに気が付いた青年は驚いた顔をしていた。

「監督はどう攻めるんですか?」
「ここからは詰め将棋だ。今の甘いボールで打ち気になってくれてると仮定して、次はストライクからボールになるカーブを振らせる」

真田の予想した通り吉永はアウトコースギリギリのところからインローへと向かってくるカーブを投じる。リュシーはこれに振っていったもののチップになりファール。フルカウントとなった。

「おっ、本当にカーブだ」
「じゃあ次は?」
「内角高めのストレート。ボール球でいい。振ってくれるはず」

吉永の投じた六球目。フルカウントのため投球と同時に一塁ランナーがスタートを切る中、内角高めの際どいところに投じられたストレートをリュシーはカット。バックネットへのファールとなる。

「なるほど。3ボールからの甘い球で打ち気を誘って外に向かう変化球」
「甘い球を見送ったことで次のボールは逃したくないという心理を利用しての投球ね」
「その直後に内角の速い球で身体を起こして最後は吉永の決め球のカーブで打ち取るってことですか」

納得したように最後の投球を予想する町田たち。それに真田は静かに頷いた。

「ただ、問題があるとすれば……」
「フルカウントだから一塁ランナーがスタートを切ってしまうことですね」

三振を取れれば理想だが万が一ヒット……もしくはエラーにでもなろうものならスタートを切っている一塁ランナーが三塁を陥れる可能性が高い。そうなるとランナー一、三塁の状態で次の打者を迎えることになる。

「ここも外れてもいいくらいの気持ちで際どくいく必要がある。ただ、ここまでされたらリュシーも振りに来るはずだ」


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