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俺様勇者と武闘家日記
第2部
エジンベア
ノルドの過去
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はずだ。
 でも、自分が勇者サイモンの仲間であることを伏せていたのなら、あえて病気だと嘘をついていたのも納得できる。どちらにしろ、命が失われていくことに変わりはなかったのだけれど。
「お前さん、フェリオの知り合いか?」
 気遣うように私に問いかけるが、師匠の秘密を知った私の心中は、ショックよりも驚きの方が大きかった。
「はい。昔、彼に武術を教わりました。でもその時は、彼が呪いを受けていたなんて知りませんでした。てっきり病気か何かかと思って……」
「そうか……。まあもともと自分のことをあまり話さん奴だったからな。お前さんみたいな弟子がいただけでも驚いたわ。……それで、あいつもやはりこの世にはおらんのか?」
「……はい。一年以上前に」
「そうか……。あいつも逝ったか……」
 そう言うと、ノルドさんは天を仰ぎ見た。いっぺんにかつての仲間が二人亡くなったことを知らされたのだ。その胸中に秘めた悲しみは一体どれほどなのだろうか。
「ノルドさん……」
「……あんたには酷なことを聞いたな」
 ユウリもノルドさんが気がかりなのか、複雑な表情を向ける。
「何、わしもお前さん方人間よりは長生きでな。人の生き死にに遭遇するのは慣れておる。事実が知れただけでも、良かったよ」
 それでも、ノルドさんの眦に光るものを見つけてしまったのは、気のせいとは思えなかった。
「急に尋ねてしまってすまなかったな。少しでもオーブの情報が聞けて助かった。礼を言う」
「こちらこそ、何も出来なくてすまん。だが、もしわしの助けが必要なら、いつでも言ってくれ。出来る限り力を貸そう」
 お礼を伝えるユウリに、ノルドさんはいつもの明朗な口調で返す。
「ありがとうございます、ノルドさん」
 私もお礼を言うと、隣にいたルカも合わせてお辞儀をした。
「邪魔したな」
「いや、あんたらならいつ来ても構わん。また来てくれ」
 そう別れのやりとりを交わすと、私たちはノルドさんのいる洞窟をあとにした。
「……」
 洞窟を出たあと、私は何とも言えない気持ちで辺り一面に広がる草原を眺めた。
 私も今、師匠と同じ道を通っている。魔王の城に近づくにつれ、それまでどこか他人事のように聞いていた魔王や魔王軍の噂が、ここへきて現実味を感じるようになったのがその証拠だ。
 この先、師匠と同じような状況に遭遇するかもしれない。その時私が判断したことが、間違いだったと後悔しないよう、ちゃんと物事を見極めなければ。
「……アネキ、アネキってば!!」
「うわっ、何!?」
「何じゃないよ。さっきからユウリさんが呼んでるよ」
どうやら考え事をしている間に、ユウリに呼ばれていたらしい。私はすまなそうに彼を見た。
「おい、鈍足。お前の師匠はイエローオーブについて何か言ってなかったか?」
「あー……、何
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