第十二幕その二
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「私は幸せやった、そやからな」
「奥さんがですね」
「私の病気が感染ってな」
ここで悲しい目になって言いました。
「若くて。三十になってちょっとして」
「お亡くなりになって」
「ずっと働き詰めでしかも感染って」
ご自身の病気がというのです。
「あれは堪えた、辛かった」
「遺書も書かれたとか」
「そやった、寂しくてな」
奥さんが亡くなられてというのです。
「どうにもならんかった」
「そうでしたか」
「けど私も死んで」
「それで、ですね」
「また一緒になれてよかった」
こう言うのでした。
「死んでずっと大阪におられて」
「奥さんともですね」
「そうなれてよかった」
「そうですか」
「ほんまにな、そしてな」
織田作さんはさらにお話してくれました。
「また幸せになれた、大阪でかみさんと一緒やと」
「それで、ですか」
「私はええわ」
それで充分だというのです。
「ほんまにな」
「そうですか」
「こんなええことないわ」
「ううん、織田作さんも凄いことがあったんだね」
「そうよね」
チープサイドの家族はお話をここまで聞いて言いました。
「小説やドラマみたいだよ」
「囚われの美人さんと駆け落ちなんてね」
「しかもお友達まで手伝ってくれて」
チーチーも言います。
「それでだからね」
「後も大変だったと思うけれど」
トートーはそこまで考えました。
「一緒になれてよかったね」
「ハーレーロマンスっていうか」
ジップはこう言いました。
「シェークスピアにも負けていないね」
「物凄い恋愛劇ね」
ポリネシアも唸りました。
「これはまた」
「実際にそうして一緒になれてよかったよ」
ホワイティも思うことでした。
「というかお店のご主人が思いきり悪役だね」
「当時は結構あったことにしても」
それでもとです、ガブガブは思いました。
「借金をかたに奇麗で若い人を囲ってるとかね」
「時代劇みたいだね」
「あと本当に恋愛小説か漫画だよ」
オシツオサレツもこう考えています。
「けれど一緒になれた」
「相思相愛の人達同士でね」
「しかもずっと奥さんを愛していたなんて」
老馬は織田作さんを感動する目で見て言いました。
「立派だよ」
「まさに本物の愛だよ」
ダブダブは太鼓判を押しました。
「織田作さん凄いよ」
「いや、あの時はただただ必死でな」
織田作さんは動物の皆にもお話しました。
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