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ドリトル先生とめでたい幽霊
第十二幕その一

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               第十二幕  ずっと大阪に
 織田作さんは先生達にコーヒーを飲みながらお話しました。
「いや、あの時はな」
「京都の学校に通っておられて」
「胸患って」
 そうしてというのです。
「入院してな」
「そうしてですね」
「大学、帝大目指してたけどな」
 それがというのです。
「もうそれでな」
「大学の方はですね」
「諦めたんや」
「そうでしたね」
「そしてな、私の作品そやけど」
「彷徨われましたね」
「高校行かん様になって」 
 そうなってというのです。
「毎日喫茶店に通う様になった」
「喫茶店はその頃からお好きでしたね」
「一応下宿は出るねん」
 そうしていたというのです。
「けど通学途中でな」
「喫茶店ですね」
「友達にコーヒー飲んでいかへんかって言うてな」
「そうしてでしたね」
「喫茶店に入ってそこにずっとおる」
「そうした風になられて」
「もう学校はな」
 こちらの方はというのです。
「どうでもよおなってた」
「それでその中で」
「ハイデルベルグに入って」 
 その喫茶店にというのです。
「そこでかみさんと会ったんや」
「一枝さんですね」
「そや、そのかみさんがな」
 織田作さんはコーヒーを飲みつつさらにお話してくれました。
「競馬のや」
「奥さんですね」
「あの主人公も実は」
「織田作さんをですね」
「かなり入れてるで」
「やはりそうですね」
「あの時ほんま惚れて」
 そうなってというのです。
「毎日毎日通い詰めて」
「そうして奥さんをですね」
「口説いてな、けどな」
「先程お話した事情があって」
「一緒になれんでな」
 普通にしていればというのです。
「当時は結構あった話でな」
「そうしたご時世でしたね」
「江戸時代みたいなもんが残ってたんや」
 コーヒーを飲みつつ身振りも交えてお話します、その動きがまた庶民て来て親しみを持てるものです。
「それでな」
「奥さんも普通にはですね」
「店から出られんで」
「それで、ですね」
「友達が手伝ってくれて助かった」
 織田作さんは当時のことを思い出してしみじみとなりました。
「それでは夜にな」
「梯子を持って行って」
「そしてな」
「二階におられる奥さんをですね」
「窓から出してな」
「それで下宿にですね」
「迎え入れて」
 そうしてというのです。
「晴れて一緒に暮らしてな」
「そこからですね」
「結婚したんや」
「そうでしたね」
「ほんま嬉しかった、かみさんがおって」 
 それでというのです。
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