献身
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すよ。でも……」
「何ですか?」
「可奈美ちゃんは手伝ってくれるだろうけど、リゲルは分からないし。でもせめて、あまり紗夜さんに来てほしくないかな」
ハルトの言葉に、紗夜は押し黙る。
「それは……私が、ただの人間だからですか?」
「それ、どういう意味?」
ハルトは少し怒りを露わにした。
「……それは……」
紗夜は、右手で左腕を掴む。震えながらも彼女は、言葉を続けた。
「保登さんみたいな、超常の力を得られれば、私も松菜さんに協力できたのではないかと」「やめて」
それ以上を、ハルトは止めた。
「ネクサスの力があれば、とか考えないで。あの時は確かに助けてもらったけど、本来ココアちゃんだって戦いに入ってはいけない人なんだからね」
ネクサス。
以前ココアに憑りついていた、謎の光の化身。
確かに紗夜の心に付け込んだ敵から彼女を助けるためには、その光の力が不可欠だった。
だが。
「……可奈美ちゃんや他の皆は知らないけど、少なくとも俺は、戦う力を持たない人たちが、戦うことさえ知らないまま生活してほしいって思ってるからね」
「知らないまま?」
「そう。生きている人は、ちゃんと生きてほしい。ファントムとか、聖杯戦争とかに関わることさえなく。俺がこんなことを言うのも変な話だけど、俺は、そもそもウィザードなんて存在してはいけないと思う」
「……」
予想外のことだったのだろう。
紗夜はぽかんと口を開けていた。
「それ……松菜さん自身が、ウィザードでいることを嫌っているようにも聞こえますけど」
「……それは……」
それ以上、口を動かすべきなのか。
迷っている内に、ハルトと紗夜の耳に声が届いてきた。
「皆さま。さあ、祈りを」
見滝原南の、アウトローな雰囲気とは真逆に、静かで落ち着いた声色。
浮浪者たちが集まり、人だかりとなっている。ハルトと紗夜が目を凝らせば、その中心になっている人物が見えた。
「……献身の道を見出すのです」
「あれは?」
「万物の霊長たる人類。それはやがて、大いなる存在に食い散らかされるでしょう」
人だかりの中心にいた人物___恰好を形容すれば、司祭だろうか___は、フードで顔を隠したまま、
「死せる定めのはかなきものが 身の程を忘れ 栄華を謳うとき 其は天を揺るがし 地を砕き 摂理の怒りを知らしむる 必定たる滅びの具現」
「えっと……つまり?」
ハルトが首を傾げる。
司祭はにったりと笑みを浮かべたまま、人々に指示する。
「さあ、皆様。献身への祈りを」
司祭の言葉と共に、集まった人たちも祈りを捧げる。
祈りといっても、一般的な祈りの形式ではない。手を額に当て、目
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