第四章
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「ない」
「そうですか」
「侍なら敵味方に分かれるのは常だろ」
「戦国の世ではそうでした」
「だからな」
「西郷さんと戦うことも」
「あった、おい達薩摩っぽには特別な人だが」
それでもというのだ。
「そうなることもな」
「あることで」
「これは運命だった、だからな」
「悲しんだりすることはですか」
「ない、おいもそう言い聞かせている」
自分自身にというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「西郷さんは逆賊にはならんとのことだし」
その誹りを受けないというのだ。
「今は勝ったことをよしとしよう」
「わかりました」
重野は連隊長の言葉に頷いた、そして戦の後始末が終わるとだった。
連隊の駐屯地に戻った、それから暫くして西郷は逆賊ではないと陛下ご自身が言われたことを知り。
そしてだ、その後で。
西郷と共に生き共に幕末の動乱の中を働いてきた大久保利通が西郷の死を聞いて号泣しその後で暗殺されたと聞き。
重野は連隊長にこう言った。
「大久保さんも」
「あの人も薩摩っぽだったな」
「ですね、それに特に西郷さんといつも一緒にいた人だったので」
「尚更だったんだな」
「西郷さんを大事に思ってましたね」
「それも誰よりもな」
そうであったというのだ。
「あの人は」
「そうでしたね」
「あの人も戦いたくなかったんだ」
西郷とはというのだ。
「そうだったんだ、だが戦になるとな」
「戦うのが薩摩隼人です」
「だから戦った、それだけのことだ。ではな」
「西郷さんも大久保さんも」
「冥福を祈るか」
「そうすべきですね」
「そうだ、薩摩っぽだからな」
彼等も自分達もというのだ、こう話してだった。
重野は連隊長と共に西郷それに大久保の冥福を祈った、彼は死ぬまで西郷とはどうしても戦いたくなかったと語った。
しかしそれでも官軍であり侍であり何よりも薩摩の者だから戦ったとも語った、そうしてそのことを恥とはしなかった。
そうしつつ西郷それに大久保の冥福を祈り続け彼が死語高い位を授けられたことも喜んだ。それも全て薩摩の者だったからだと語った。
薩摩人 完
２０２１・１０・１３
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