第三章
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アイヴァンホーは毅然として決闘を受けた、誰もが彼が劣勢だと思った。
「ボア=ギルベール殿は強い」
「聖堂騎士団一の騎士殿だ」
「如何にアイヴァンホー殿でも勝てない」
「それは無理だ」
「流石にな」
こう思っていた、しかしだった。
アイヴァンホーは決闘に出た、二人は甲冑で武装していた。ギルベールは大剣を持っていたがアイヴァンホーは槍だった。
「お互い得意とする武器だな」
「ギルベール殿は国一の大剣の使い手だ」
「その腕も膂力も恐ろしいまでだ」
逞しくアイヴァンホーより大きな岩の様な身体の彼を見つつ言う。
「そのギルベール殿とどう戦う」
「流石に勝てない」
「アイヴァンホー殿も強いが」
「それでもな」
無理だと多くの者が思った、そしてギルベールもだった。
アイヴァンホーにだ、こう言った。
「お互いに騎士として戦おう」
「それぞれの誇りを賭けてな」
「私は騎士団の言葉を信じている」
騎士団の者としてというのだ。
「そして卿はだな」
「彼女の潔白を信じている」
「そうだな、ではどちらが正しいか」
「それを証明しよう」
「はじめ!」
立会人がここで決闘の幕を開ける言葉を出した、そうしてだった。
二人は観衆達に囲まれつつ勝負をはじめた、ギルベールは大剣を縦横に振るう。それはまるで暴風の様であった。
「掠っただけで吹き飛ばされるな」
「そうなるな」
「それだけの一撃だな」
「事実あの一撃で多くの敵を倒してきた」
「あの一撃に誰が勝てる」
「アイヴァンホー殿でも無理だ」
観衆達はこう言っていた、勝負を観ながら。
「これはな」
「下手をすれば真っ二つだ」
「甲冑も兜もあの大剣の前には無意味だ」
「それこそ木の葉の様なものだ」
「鉄でも意味はない」
「身体もそうなる」
アイヴァンホーの心配さえしていた、レベッカはそれを見て自分のことよりもアイヴァンホーのことを心配した。
「お命が」
「いえ、大丈夫よ」
「アイヴァンホー様は勝たれるわ」
「だから安心して」
「落ち着いてね」
周りはその彼女を励ました、だが。
その周りも心配していた、アイヴァンホーのことを。
「どんどん押されていっている」
「一方的じゃないか」
「これは勝てないぞ」
「やはりギルベール殿の勝利か」
殆どの者がこう思った、しかし。
アイヴァンホーの目は冷静だった、彼はギルベールの一撃を全て紙一重でかわしていた。重い甲冑を着ていてもそうであり。
迫る彼の渾身の一撃、横薙ぎのそれをだった。
上に跳んでかわした、それから。
ギルベールの頭、顔全体を覆う兜にだった。
槍の一撃を浴びせた、すると。
兜は弾け飛び彼の岩の様な顔と黒い髪と目が姿を現した、それでだった。
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