第四章
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「きっと凄いことが出来るぜ」
「今でも妙に凄いしな」
「じゃあ俺達も劉さんの為に何かするか」
「劉邦さんの為にな」
彼を囲んで笑顔で言うのだった、そうして一行は彼を中心として居酒屋に戻ってまた飲み始はじめた。
始皇帝は巡幸を終えて咸陽に戻った、そうして。
周りにだ、こう言った。
「二人気になる者を見た」
「気になる者?」
「といいますと」
「それは一体」
「一人はやけに大きく逞しい男だった」
まずは彼のことを話した。
「あれは強い、中原で誰よりも強い」
「そこまで強いのですか」
「では王将軍や蒙将軍よりもですか」
「さらに強いですか」
「蚩尤よりもやもな、そしてもう一人だが」
次は彼のことを話した。
「自然と人が集まる、その中には優れた者もな」
「集まりますか」
「そうなるのですか」
「その者は」
「二人共少し見ただけだった」
巡幸のその中でだ。
「気になった」
「左様ですか」
「ではその二人どうしますか」
「一体」
「何もすることはない、所詮は民草の中におるだけだ」
始皇帝は今度は素っ気なく答えた。
「民は法と力で従わせるのみ、何も持てぬ民ならな」
「それでよいですか」
「そうなのですか」
「これといってですか」
「何もせずともいいですか」
「そもそも二人を何処で見たかも忘れた、楚だったが」
そこで見たことがは覚えているがというのだ。
「楚の何処で見たか忘れた、その程度ならな」
「放っておいていい」
「そうなのですか」
「その程度の者達なら」
「特に」
「家が残り三戸になろうとも秦を滅ぼすのは楚と言っているそうだが」
それだけ楚の秦への怨みは深いということだ、その彼が言った通りに楚の者達は秦を相当に怨んで憎んでいるのだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「法と力で従わせる」
「そうしますか」
「城の壁もなくさせている」
これは治める場所全てのことだ。
「守るものもなくてどうする、だからな」
「それで、ですか」
「楚の者でも恐れることはない」
「民草に過ぎないなら」
「左様、では政に戻る」
こう言ってだった、始皇帝は。
咸陽に戻って早速政に入った、そうして国を治めるが。
後に秦はこの二人によって滅ぼされた、項羽と劉邦によって。始皇帝の目は正しかったと言えるだろう。何しろ彼の国を滅ぼしたのだから。歴史にある一幕である。
皇帝を見て 完
2021・10・15
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