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乾かない壺
第二章
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 神々はその粗末と言うしかない食事を食べはじめた、老夫婦はその二人を見て話した。
「もう少し私達に何かあれば」
「何か恵みがあれば」
「もっとおもてなし出来るのに」
「冬の蓄えも出しても足りないでしょうね」
「お二人にとっては」
「こんな粗末で少しだと」
 二人で話して申し訳なく思っていた、だが。
 ここでだ、二人はふと気付いた。見れば。
「あれだけ召し上がられているのに」
「全く減らないわ」
「パンも葡萄もワインも」
「それどころか」
 粗末な筈のものがというのだ。
「それがね」
「どんどんよくなっていないか」
「減らないどころか」
「これはどういうことなんだ」
「質がよくなって減らないなんて」
「一体」
「何が怒っているのかしら」
 二人はいぶかしんだ、そして。
 夫ははっとなって妻に言った。
「まさか」
「まさか?」
「この人達は人間じゃないんじゃないか」
 こう言うのだった。
「まさか」
「そういえば」
 妻も言われてはっとなった。
「幾らでも召し上がられて」
「しかもその食べものがな」
「全く減らないし」
「しかもよくなっているんだ」
「そんなこと人間には出来ないわね」
「出来るとすれば」
 それこそというのだ。
「神様だぞ」
「そうね、じゃあこの人達いえ方々は」
「神様だな」
「そうね」
 二人で話した、そしてだった。
 ゼウスとヘルメスの前に平伏して言った。
「貴方達は神ですね」
「神様ですよね」
「神様とは知らず失礼なことをしました」
「粗末なものをお出しして」
「そして粗末な家にお招きして」
「何と申したらいいのか」
「確かに我々は神だ」
 ゼウスが微笑んで答えた。
「私は天空と雷の神ゼウスだ」
「私は伝令と商業の神ヘルメスだ」
 ヘルメスも微笑んで答えた。
「今は旅をしていてな」
「この辺りに立ち寄った次第だ」
「だが知っていると思うが村では相手にされず」
「こうしてお世話になっている次第、そしてだ」
 ゼウスはさらに話した。
「そなた達の心を受け取った、何が粗末か」
「粗末ではないですか」
「それはとても」
「これ以上はないもてなしの心を貰ったのだ」 
 だからだというのだ。
「それが何故粗末か」
「父上の言われる通りだ」
 ヘルメスも言った。
「むしろ私達からお礼をしたい」
「お礼ですか」
「そんな勿体ない」
「神は礼を忘れぬ」
 ゼウスは穏やかだが確かな声で答えた。
「だから何か一つ望みを言ってくれるか」
「そしてその望みをですか」
「適えてくれるのですか」
「そうだ」 
 平伏しつつも顔を上げた老夫婦に答えた、その目は慈愛に満ち神性は隠しているがそれでも神であることが伺えた。

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