第一章
[2]次話
乾かない壺
ゼウスとヘルメスの二柱の神々はこの時プリュギアという土地を旅していた、ここはトロイアの近くであるが。
ゼウスはある村から離れたところで憤慨して言った。
「全く、何だというのだ」
「酷い連中ですね」
ヘルメスも辟易した顔で応えた、二人共神の力は隠しているがそれでも外見はオリンポスにいる時のままである。
「この村の連中は」
「一夜の宿を借りようとすれば」
「それだけのことなのに」
「わし等が旅で汚れてるだの言ってな」
「ちょっと雨露を凌げる場所と口にするものをと言えば」
「見れば結構豊かな村なのにな」
ゼウスは憤慨したまま言った。
「そうだというのに」
「恵みを求めたら」
「怒鳴るわ罵るわでな」
「しかも犬までけしかけます」
「とんでもない奴等だ」
「全くですね」
「他の場所に行くか」
「そうしますか」
二柱の神々はこう話してだった。
そのまま村を去ろうとした、しかし。
ここでだ、村のはずれの粗末な家から年老いた夫婦が出て来て彼等に声をかけてきた。
「あの、よかったら」
「うちに来ませんか?」
「困っておられる様ですし」
「よかったら」
「?お主達はこの家の者か」
「その家の方々でしょうか」
神々は老夫婦を見て応えた。
「若しや」
「そうなのか」
「はい、私はピレモンといいまして」
「私はバウキスといいます」
老夫婦は夫そして妻の順に名乗った。
「昔からここに住んでいます」
「そうしています」
「それでなのですが」
「よかったらです」
「私達の家にです」
「来られますか」
「そうしていいか」
ゼウスが老夫婦に応えた。
「よかったら」
「はい、お困りでしょうし」
「それでしたら」
「粗末な家で何もないですが」
「それでも」
「うむ、わかった」
ゼウスは老夫婦の好意を受けることにした、そうしてだった。
そのうえでだ、ヘルメスと共に老夫婦の家に入ったが。
家は今にも崩れそうでテーブルも傾いていた、それで古い陶器の皿を敷いて何とか安定させていた。
老夫婦はそのテーブルの上に食事を出した、それはというと。
「葡萄はしぼんでいますが」
「パンは固いですが」
「そしてワインは渋いですが」
「よかったら」
「うむ、ではな」
「いただきます」
ゼウスとヘルメスは申し訳なさそうな老夫婦に笑顔で応えた、そして。
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