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王の腕輪
第二章

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「これがだ」
「私への贈りものですか」
「そうだ、どうか」
「相棒が立派な飾りを頂きました」
 男は自分に問うた王に笑って答えた。
「しかし左手が恥ずかしく思っています」
「右手が貰ってか」
「自分が裸にいることに」
「この男また言うか」
 館の戦士達は男のその言葉にまた怒った。
「何と図々しい」
「王にふざけた名前を出しただけでなく」
「今度はそれは」
「贈りものをもっと寄越せか」
「実に図々しい」
「ふざけた男だ」
「ははは、よい」
 王はここで鷹揚に笑った、そうして戦士達を制した。
「そのこともな」
「そう言われますか」
「王がそう言われるなら」
「我等もです」
「それで」
「うむ、ではだ」
 戦士達を制してからだった、王は男に向かいなおり。
 腕輪をもう一つ外して男の左手に嵌めた、すると。
 男は態度を変えた、これまでその態度はふてぶてしいものであったが王の前に片膝を突いて厳粛な声で言った。
「豪気な王よ、私は貴方に忠誠を捧げます」
「そうしてくれるか」
「はい、若し貴方が討たれた時はです」
 敵にというのだ。
「貴方から授かった腕輪をしているこの手がです」
「そなたがだな」
「その敵に復讐し」
 そうしてというのだ。
「王とその者をヴァルハラに会わせます」
「そうしてくれるか」
「そして私も」 
 自分自身もというのだ。
「後で」
「ヴァルハラに来るか」
「この館に最後まで留まり」
「そうしてくれるか」
「この二つの腕輪に誓って」
 こう言ってだった。
 戦士は実際に王に絶対の忠誠を誓って戦っていった、常に王を護り縦横に戦った。
 その両手には常に一対の腕輪があった、彼は王が討たれた時にその敵を自らの手で倒し瀕死の王を担いで戦場から館に戻った。
 その時彼も重傷を負っていたが王は彼に微笑んで言った。
「その誓い見せてもらった」
「左様ですか」
「よくやってくれた、だがそなたもな」
「もうそろそろ」
「そうだな、ではな」
「ヴァルハラで会いましょう」
「そうしよう」
 こう話してだった。
 王は去りそしてだった。
 戦士もそうした、彼等はヴァルハラで会った。戦士はそこでも王に忠誠を誓った。ヴァルハラでもその両手には腕輪があった。


王の腕輪   完


                   2021・10・17
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