第一章
[2]次話
王の腕輪
デンマーク王ロルフは英傑と言われている、事実彼は堂々たる外見であり威厳も備え実に王そして英傑らしい。
その彼の館にある日旅の者が来た、彼はこう名乗った。
「ウォッグというのか」
「はい」
「そう名乗っています」
「随分と大きくです」
「灰色の髪と目です」
「槍を持っています」
「王にお会いしたいと言われています」
周りの者達はこう王に話した。
「その様に」
「それでどうされますか?」
「会われますか?」
「会おう」
王は周りの者にこう答えた。
「それではその者を連れて来るのだ」
「わかりました」
「では王の御前に案内します」
「こちらに」
「その様にな」
王も応えてだった。
そうして旅の者を自分の前に連れて来させた、その者は周りが言う通り長身で灰色の髪と目であった。その目の光は鋭く若いが異様に威厳があり。
右手に持つ槍も確かなものだった、王はそこまで見て若者が只者ではないと思った。そうしてだった。
若者は玉座に座る王と周りにいる屈強な戦士達を見回して胸を張り余裕のある笑みを浮かべてこう言った。
「ロルフ王は威風堂々たる方と聞いていましたが」
「そうなのか」
「こうして見ますと」
王に笑って言った。
「クラキ、棒切れの様な方ですな」
「何っ、棒切れ」
「王をそう言うか」
「こ奴非礼な」
「何という者か」
「ははは、よい」
王は怒る戦士達に笑って告げた。
「名前を与えてもらったではないか」
「ですが王、棒切れですぞ」
「王を棒切れと呼ぶなぞ」
「英傑と謡われる王を」
「その棒切れの先に補を備えれば槍となる」
王は笑ってこうも告げた。
「そうであろう」
「そう言われますと」
「確かに」
「その通りです」
「それは」
「だからよい」
若者に負けず劣らず余裕のある態度で述べる。
「余はな」
「そうですか」
「王がそう言われるならです」
「我等も」
「余はこれよりロルフ=クラキと名乗る」
自分の名をこうした。
「そして人に名前を与える者は贈りものもであるが」
「では」
「いや、お主は見たところ旅の者で何も持っておらぬ」
若者が粗末な服と槍だけなのを見て言った。
「だからな」
「それで、ですか」
「余がお主に名前の礼として贈ろう」
「そうして頂きますか」
「これをやろう」
こう言ってだった。
王は自分の手にある黄金の腕輪を取って若者のところに歩み寄り差し出した、そうして笑顔で告げた。
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