第二章
[8]前話
「私の家系戦前早死にした人多くて私の家系早死にじゃないかって思ってるんですが」
「ああ、それで何処でもだよ」
館長は何でもないという口調で答えた。
「戦前はね」
「そうなんですか?」
「子供の早世が凄く多いね」
「はい、特に」
那奈はその通りだと答えた。
「そうなんです」
「それはね」
「戦前だとですか」
「日本の医学は終戦から段違いによくなるんだ」
「そうなんですね」
「抗生物質も出てね」
このこともあってというのだ。
「栄養学も普及して」
「そうしてですか」
「子供が順調に育つ様になって梅毒や結核も治る様になって」
こうした病気もというのだ。
「衛生も栄養もよくなってね」
「それでなんですか」
「そして癌も昔より治る様になって」
「今もよく亡くなってますが」
「そこもよくなってね、それで早世する人もね」
そうした人もというのだ。
「日本全体でね」
「減ったんですか」
「そうだよ、だから昔は今より早世の人がずっと多くて」
「子供が死ぬこともですね」
「多かったんだよ、別に高見さんの家系が早世じゃないよ」
「どのお家もですね」
「そうだったんだよ、このことは覚えておいてね」
こう那奈に話した、那奈はその話を聞くとその日のうちに実家にいる母に電話で話した。すると母は驚いて言った。
「そうなのね」
「ええ、だからうちの家系はね」
「早死にの家系じゃないのね」
「そうみたいよ」
「そういえば戦争終わってから子供で死ぬ人いなくて」
「そんな若くしてでしょ」
「事故で死んだ人はいても」
それでもというのだ。
「二十代三十代で病気はね」
「そうでしょ」
「そうなのね、どのお家もだったのね」
「昔はね、だからうちの家系が早死にかっていうと」
「違うのね」
「安心していいわ」
「わかったわ、お母さんほっとしたわ」
「私もよ」
那奈は母に笑顔で言った、そして実際に母は九十まで生きて他の親戚も那奈自身も長生きした。今はそうであった。
早世は何が原因か 完
2022・3・29
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