暁 〜小説投稿サイト〜
お骨
第三章

[8]前話
「ですから」
「いいことよ、あのお骨はね」
「神谷さんのご主人で」
「本当に六十年以上ね」
 それだけの歳月をというのだ。
「一緒にいた人でね」
「掛け替えのない人ですね」
「私達がこれまで生きたより長く生きてきたから」
 その六十年以上もの間というのだ。
「だからね」
「絆も深いですね」
「もう自分自身みたいだって言われていたでしょ」
「はい」
「その通りでね」
 まさにというのだ。
「だからなのよ」
「ずっとあそこに置いていて」
「それで一緒におられるから」
「私達はですね」
「その気持ちを受け取ってね」
 そうしてというのだ。
「大事にしないと駄目よ」
「お骨とそこにあるものを」
「そうよ、ただの骨じゃないのよ」
 あのお骨はというのだ。
「決してね」
「神谷さんにとっては自分自身に等しい」
「掛け替えのないね」
「そうしたものですね」
「だからね」
 それ故にというのだ。
「またお邪魔させてもらったら」
「あらためてですね」
「そうよ、奇麗にさせてもらって」
「お骨もですね」
「大事に扱わせてもらうのよ」
「神谷さんにとって自分自身と言っていい位のものなので」
「だからね」
 その為にというのだ。
「そうしましょう」
「絶対にですね」
「ご主人だからね」
「そうですよね」
「人は亡くなってもお骨や遺品に心が残っているから」
「魂がですね」
「そして思い出もね」 
 残った者達のそれもというのだ。
「だからこそね」
「大切にするものですね」
「ずっとね」 
 こう言ってであった。
 この日は会社に戻りそこで仕事をした、果林にとっては非常に大切なことを学んだ一日であった。


お骨   完


                2022・3・28
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ