暁 〜小説投稿サイト〜
DOREAM BASEBALL 〜夢見る乙女の物語〜 
ビッグイニングの法則
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れない恐怖。グラウンドにいる少女たちがそれに気が付いているかは定かではないが、後々気付かされるのは間違いない。

「できるならここで切り替えてこれ以上の失点……」

逆転されたことを忘れてもらいたいと願っていたところでダイヤモンドを回ってきた少女が何やら動きを見せた。ホームベースを空けさせるとロンダートをした後ーーー

「とぅ!!」

着地した足で地面を蹴り上げ、バク宙をしてホームベースを踏んだのだ。これには本部席にいた全員が唖然として言葉が出ない。

「相手の気持ちを考えなさい」
「あいたっ」

どや顔の少女の頭にチョップをいれるリュシー。それに照れたようにベンチに向かったソフィアだが、観客席は彼女の高校生らしからぬパフォーマンスに沸きに沸いていた。

「あれじゃあピッチャーが可哀想ですよ」
「えぇ、惨めすぎます」

彼女の過剰なパフォーマンスに苛立ちを覚えている指導者たち。しかし、真田と町田はここでも冷静だ。

「よほどこの回で勝負を決めたいらしいな」
「こんなチャンスは何度も回ってこないですからね」
「どういうことですか?」

彼らが何に気が付いているのかわからない者は問いかけるしかない。その問いに町田は一塁ベンチを指さす。

「あの高校生らしからぬパフォーマンスで相手の冷静さを欠かせたいんだ。その証拠にカミューニがあの子を注意していない」

ベンチに帰ってきた彼女の肩をポンッと叩いただけで何事もなかったように試合に視線を向ける監督。その光景はまさしく監督の指示であることを物語っていた。

「こんなことされたらエースを代えるなんてできない。やられっぱなしじゃ今後にも影響が出るからな」

仮に勝ち上がったとしても吉永が調子を崩してしまえば勝ち上がるのは至難の技。それをわかっているからこそ指揮官はこの状況でも彼女にマウンドを任せる。

「本当は代えた方がいいと思うが……」
「また一発が出たら試合が決まりかねない」

打席にいる少女は前の打者よりもさらに能力がある。そんな彼女に冷静さを欠いたまま挑めば打たれかねない。
それを見越してかキャッチャーがなかなか座らない。本来なら行う必要もないシフトの指示を細かく出しており、間合いを取ろうとしているのが誰の目からもわかる。

「うまいな、あいつ」
「守備の要を任されるだけのことはある」

そのおかげかマウンドの吉永の顔付きが落ち着いたように感じた。頭が冷えたようで冷静さを取り戻した彼女を見てマスクを被りポジションに着く。

(初球は外れてもいいから厳しくいきたいはず。何から入る?)

このスラッガー相手にどのように攻めるのか注目する町田。すると、動きを見せたのは守備ではなくバッターだった。

コッ

「セーフティ!
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