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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
シュミットの最期  その3
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周囲を見回す
「米国を巻き込んだ国際世論の形成工作をしようと思っている……」
 議長の言葉が言い終わると同じころドアが開かれる
不意に、男が部屋へ乗り込んできた
黒い詰襟を着た男に、衆目が集まる
「最後に頼るのは米国って訳だ……。
それだけではあるまい……。
貴様等が、この国の周囲に鉄条網を張り巡らせていた頃から……、東ドイツの財政。
半分は、西ドイツによって助けられていた」
周囲が騒然となる
「何だと」
腕を組んで立つ東洋系外人の男は、苦笑交じりに続ける
「SEDも堕ちた物だ。
ソ連の搾取に甘んじながら、独立国と天下に(うそぶ)く連中が、他の大国に尻尾を振る」
男は、怫然(ふつぜん)とした態度を取る議長の顔を見る
大道芸(サーカス)でも始めるつもりかね……。
議長さんよ……」
彼の問いに、議長は苦虫を?み潰したような表情をする
国防相はすかさず、叫ぶ
「衛兵を呼べい」
号令の下、直立した護衛の警笛が成る
建屋の中に足音が響く
白色のサムブラウンベルトをした警備兵が男の周囲を囲み始める
「貴様は何者だ。官姓名を名乗れ」
一頻り哄笑をした後、名乗る
「俺の名前は、木原マサキ。
天のゼオライマーのパイロットだ」
 その東洋人は、自らを木原マサキと名乗り、周囲を睥睨(へいげい)する
「ここをどこであるか知っての狼藉(ろうぜき)か。
日本軍のパイロットが何の目的だ」
マサキは不敵の笑みを浮かべる
「すっかり漏らさず聞かせてもらったぞ。
お前達にソ連を破滅させる意思が有るのならば、手を貸そう」
立ち上がった外相は、反論する
「戯言を抜かすな、小僧」
「東欧の盟主と称して、クレムリンへの命乞いをしていた小心者とは思えぬ態度。
気に入った」
警備兵が飛び掛かろうとした瞬間、周囲に見えぬ壁を張り巡らさせる
勢いよく衝突し、倒れ込む
(うずくま)る兵士たちを掻き分け、一歩前に出る
「議長やらよ。
明日の夜、貴様等が宮殿に出向いてやる。
楽しみに待つが良い」
踵を返すと、彼は高笑いをしながら部屋を後にする

 難なく参謀本部から脱出する
ゼオライマーに乗り込むと、その場を離脱
マサキは、其の儘ハンブルク近郊の町、ガルルシュテットへと空間転移させた
同地にある日本軍の臨時基地へ帰る事を選択する
持ち出した秘密資料を仕分けるためにわざわざ舞い戻ったのだ
無論唯では済む訳もなく、上司達の下に呼び出される
資料を再び隠匿した後、彼等の待つ場所へ
ハンブルク迄、用意された車で向かった
昨夜より一睡もしていない彼は、後部座席に座るなり仮眠をとる
脇に座る美久に寄り掛かりながら、微睡(まどろ)
 ハンブルク市庁舎にほど近い場所に立つ日本国総領事館 
彼は職員に案内され
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