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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
シュミットの最期  その3
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 早朝のベルリン市内を走る車列
外交官ナンバーの黒塗りの高級車が3台
その後から似つかわしくない軍用トラック2台が続く
「同志シュミット、この上はどうするのかね」
ソ連KGB大佐の階級章を付けた男が、礼装のシュミットに尋ねる
「すでに戦術機部隊は壊滅しました……。
()くなる上は、ハバロフスクへ落ち延びましょう」
男は左手で顔を撫でる
「駐留軍も動かずか……」
 頼みの綱とした駐独ソ連軍は、彼等への協力を一切拒絶した
早暁、シェーネフェルト空港へ向かうも、既に人民空軍が全権を掌握
慌てて引き返すも、憲兵隊のオートバイ隊に追われる
外交官特権で彼等を追い払うと一目散に、秘密基地へ逃げ延びる
勢いよく車道を進む中、車列の前方から銃撃を受ける
運転手は危険を察知
ブレーキを踏み、車を止める
「どうしたのだ」
運転手の咄嗟の動作に、男は狼狽する
まさか、外交官保護を認めた1961年のウィーン条約を反故にする愚か者が居るとは……
「車を出せ!」
そう伝え、運転手が車を反転させ様とした時、銃声が響く
破裂音と共に車が揺れる
車は縦に揺れ、地面に叩き付けられる
「タイヤか……」
それなりの腕が有る人物にタイヤか車軸を狙撃されたらしい
反転して車列を離れる軍用トラック
其の一台が攻撃を受ける
エンジンが入ったボンネット部分に命中し、爆発炎上
彼等は、焦る
身動きの出来ない状態で、敵は降伏を認めないようだ……
男は、折り畳み式銃床のカラシニコフ自動小銃を取り出し、弾倉を組む
槓桿(こうかん)を引き、装弾して射撃可能にする
「車外に出て、血路(けつろ)を開く」
勢いよくドアをあけ放つと同時に四方に銃弾を放つ
切換装置(セレクター)を操作し、半自動から全自動にしてばら撒く
「駆け抜けるぞ」
腰を低く落とし、有りっ丈の弾を盲射(もうしゃ)して、その場から離れようとする
その刹那、男の軍帽に銃弾が当たり、倒れ込む
脳天を一撃で打ち抜かれた(むくろ)を目の当たりにしたシュミットは、一目散に駆ける
韋駄天(いだてん)の如く駆け抜け、森の中へ逃げ込んだ
 命辛々、逃げ出したシュミットは自分が頼みとする手勢と逸れてしまった
鬱蒼(うっそう)と茂る森の中を、ひたすら歩く
深い木々の中にある僅かな獣道(けものみち)を進む
この道を進めば、間もなく秘密のヘリ発着場が有る
KGB所有のヘリコプターで脱出できれば、この国に未練はない
 やっとの思いで秘密の発着場に着く
ヘリが二台あるのを見ると、駆け寄る
しかし待ち構えていたのはKGB部隊ではなかった
国家保安省衛兵連隊の制服を着た一団が自動小銃を構え、無言で此方に狙いを定める
「貴様たちは、私を裏切る気か」
周囲の男達にそう呼び掛け、命乞いをする
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