第百十六話 小次郎、仇を取るのことその五
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「真田小次郎、手前生きていやがったのか」
「そうだ。そしてだ」
「そういやどうしてこの世界に来ていやがるんだ」
「貴様と同じだ。私も縁あってこの世界に来たのだ」
「けっ、そうかよ」
「そしてだ」
小次郎は腰の剣を抜いた。そうして身構えてだった。
彼はだ。こうも言ったのである。
「隊の規律を乱し裏切った者を成敗する」
「手前まだそんなことを」
「覚悟するのだ」
言いながらだ。そうしてだった。
小次郎は骸に斬りかかる。それを受けてだ。
骸も両手にある刃を振るう。二人の闘いがはじまった。
小次郎は一刀でだ。骸を両断しようとする。だが骸は。
両手の刃を野獣の様に振りだ。斬ろうとする。しかしだった。
小次郎はその刃を的確にかわしながらだ。骸を狙う。その小次郎の動きを見てだ。
「ちっ、何て速さだ」
「貴様の動きは見切った」
そうだとだ。小次郎は骸に言うのである。
「私とて伊達に生きて来た訳ではない」
「それは死んだ俺へのあてつけか?」
「違う」
それは否定する小次郎だった。
「生きて来て。そうして」
「生きて来て何だってんだ」
「貴様を倒す為に剣を磨いてきた」
こう言ってだった。そのうえでだ。
骸の一瞬の隙を衝いてだった。彼の首を刎ねた、剣を横に一閃したのだ。
骸の首は飛び地面に落ちた。腐った身体が倒れ込む。
だが首はだ。落ちて転がってからもだ。こう小次郎に言うのだった。
「手前、わかったぜ」
「わかった。何をだ」
「手前、真田小次郎じゃねえな」
こう言ったのである。
「女だな」
「・・・・・・・・・」
小次郎は答えない。その問いには。
「そういえば聞いたことがあるな。あいつに妹がいたってな」
「言いたいことはそれだけか」
ここでだ。もう一人の声がした。そうしてだ。
声の主は骸の首のところに来た。そうして言うのだった、
「ではもう喋る必要はないな」
「なっ、手前は」
骸は横目、彼から見て上を見た。そこには鷲塚がいた。
その鷲塚を見てだ。また驚きの声をあげたのである。
「鷲塚、手前も来ていやがったのか」
「死しても尚妄執を抱いているとはな」
鷲塚は嫌悪を込めて骸の首を見下ろして言う。
「浅ましい奴だ」
「だからどうしたってんだよ」
「消えろ」
こう告げてだった。骸の頭に剣を刺してだ。
そこに気を込めてだ。一気に吹き飛ばしたのである。これで骸は完全に終わった。
始末をつけてからだった。鷲塚は小次郎に顔を向けて言うのだった。
「奴も気付いたか」
「それは」
「前から言おうと思っていた」
どうかとだ。彼は小次郎、闘いを終えたその剣士に告げる。
「御主は本来は」
「そのことは」
「闘うべきでない。何故なら」
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