第百十六話 小次郎、仇を取るのことその二
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「皆安心して見てるわ」
「ふむ。事情はわかった」
「そういうことなの。ところでね」
甘寧に色々と事情を話してからだ。馬岱は今度は小次郎達に声をかけた。
「小次郎さん達新撰組っていつも見回っていたのよね」
「そうだ。京の都をだ」
「そうしていた」
小次郎だけでなく鷲塚も答える。
「だからこうして今見回っていてもだ」
「慣れている」
実際に慣れたものだった。陣中の見回りの。
「怪しい者は今のところ見当たらない」
「先にはいたのだが」
「あの男か」
新撰組の二人の話を聞いてだ。甘寧の顔が険しいものになる。
そうしてだ。こう述べるのだった。
「紫鏡。あちらの世界では貴殿等と共にいた」
「そうだ。あの男だ」
「あの男がいる」
まさにそうだとだ。二人も答える。
「私は見た。あの男をだ」
「小次郎は嘘は吐かない」
鷲塚は盟友として知っていた。小次郎の誠を。
そうしてだ。その誠について言うのだった。
「決してだ」
「そうだな。小次郎殿はな」
「物凄く誠実な人だもんね」
甘寧も馬岱もそのことはその通りだと頷く。
「何をされるにしても非常に真面目だ」
「こんな誠実な人いないからね」
「いや、私は」
しかしだ。その小次郎はだ。
二人のその評価にだ。顔を暗くさせたのだった。そのうえで言ったのである。
「誠実ではない」
「いや、それは謙遜だ」
「そうよ。小次郎さんが誠実じゃなかったら誰が誠実なのよ」
「嘘を吐いている」
「嘘を?」
「どういう嘘を?」
「それは言えない」
二人の問いにだ。目を伏せさせる。
そうしてだ。今度はこう言ったのである。
「だが。それでもだ」
「誠実ではないか」
「そうなのね」
「そうだ。私は嘘を吐いている」
また言う小次郎だった。
「その私が誠実などとは」
「誠にも様々な誠がある」
だがここでだ。鷲塚が小次郎に話した。
「真田君、君の誠もまた誠だ」
「そう言ってくれるのか」
「そうだ。言える」
鷲塚は何のやましさも見せずに告げる。
「確かにだ」
「それならいいが」
小次郎は鷲塚の言葉に少し心を晴れやかにさせた。ここでだ。
馬岱がだ。鷲塚の今の言葉に対してこんなことを言った。
「それにしてもさ。君付けとか君って表現だけれど」
「新撰組独特のものだったな」
甘寧も言う。
「中々いいものだな」
「格好いいのね」
「我々の時代からはじまったものらしい」
そうした呼び名や二人称はだとだ。鷲塚は二人に話した。
「そしてそれからの時代も残っている」
「成程な。そうなのか」
「新撰組ってそうしたことも流行らせたんだね」
「流行らせたと言うのか」
二人の表現にだ。鷲塚は考える顔になった。
そう
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