第二章
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「あと一日我慢するんだ」
「そうしたらですね」
「大谷さん戻ってくれますね」
「復帰してくれますね」
「何でも熱は下がって元気になったそうだ」
大谷からの連絡をそのまま伝えた。
「だからだ」
「はい、ここはですね」
「何とかですね」
「あと一日乗り切るんですね」
「そうするんだ」
実は痛風の薬が切れて今足の親指の付け根がかなり痛んでいる、だがそれを何とか堪えてそうしてだった。
牧田は部下達に言った、そして最後の一日を。
総務課総員で乗り切った、この日は特に社内でトラブルが多く総務課としても仕事が多かった。だがそれでもだった。
何とか乗り切った、そして翌日大谷が出社したが。
牧田も他の課の者達も彼を何事もなかったかの様な笑顔で迎えた。
「お帰り」
「また宜しくな」
「頑張ってね」
「はい、宜しくお願いします」
彼は笑顔で応えた、そして仕事に戻ったが。
牧田は昼に同期の経理課長に共に朝食のざるそばを食べつつ話した。
「いや、彼は気付いてないがね」
「大谷君はだよな」
「とんでもない戦力だからね」
「彼がいなくなるとだね」
「大変だったよ、一人柱が抜けると」
それでというのだ。
「仕事が大変になるな」
「それはあるな」
経理課長の神原誠も頷いてその通りと言った、四角い顔に薄くなった髪が印象的な小太りの男である。
「それを防ぐにはな」
「ああ、部署のスタッフ全員の能力を上げる」
「そうしないとな、今回で痛感した」
「最高のエースがいてもエースに頼りきるな」
「それがわかった、野球でもそうだしな」
「絶対のエースがいると有り難いけれどな」
「エースが抜けたらチームは終わりだ」
そうなってしまえばというのだ。
「俺も痛風治してな」
「やっていくか」
「ああ、さもないとまたこうしたことになるからな」
大谷に何かあればというのだ。
「だからな」
「他の社員も育てていくか」
「これからはな」
こう言って牧田は自分もビールを控える様になってだった。
大谷以外の課の者達にもどんどん仕事をさせてこれまでは放任であったが色々と教えていった。そうして人材を育ててだった。
課全体の能力を上げた、そうして総務課をこれまでよりずっといいものにしたのだった。
エース不在となって 完
2022・3・23
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