第一章
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エース不在となって
総務課長の牧田達郎、四角い眼鏡をかけて色黒の痩せた顔で黒髪をサラリーマンらしくセットしている小さい目と薄い唇に一七三程の背の痩せた彼は朝電話を受けた。
「ああ、大谷君か。いつも朝一番に来ているのにどうしたんだ」
「すいません、今朝調子が悪くて病院行ったら」
電話の向こうの総務課の社員の一人大谷昇平一九〇近い長身にすっきりとした顔ではっきりとした目ですらりとした身体に癖のある黒髪の彼が言ってきた。
「インフルエンザでした」
「何っ、それはよくないな」
牧田は大谷言葉を聞いてすぐに言った。
「有休を取ってすぐに休むんだ」
「有休取っていいですか」
「手続きは私がしておくから」
上司としてこう話した。
「君は休んだ、五日間は安静だな」
「そう言われました」
「部屋で休め、ご家族はおられたな」
「両親と同居しています」
「ならいい、ゆっくり休むんだ」
こう大谷に言ってだった。
電話を切った、だが切った瞬間にだった。
牧田はこの世の終わりの様な顔で他の社員達に話した。
「大谷君がインフルエンザになって五日程休むことになった」
「えっ、大谷さんが休みって」
「うちの課大谷さんでもってるんですよ」
「会社のこと何でも知ってて」
「総務のことなら知らないことないじゃないですか」
「しかもいつも率先して動いてくれて」
「細かいところまで見てくれてすぐに対応してくれて」
課の者達その殆どが女性の彼等は驚いて言った。
「他の課とも太いパイプがあって」
「大谷さんが出てくれたら収まる仕事幾つあるか」
「その大谷さんがインフルエンザって」
「うちどうなるんですか」
「ここは仕方がない、私も痛風だが」
ビールの飲み過ぎの結果だ、その為満足に動けないのだ。
「やるしかない」
「大谷さんが戻って来るまで」
「何とかですね」
「やっていくしかないですね」
「そうだ、ここは乗り切ろう」
牧田は課の面々に決死の顔で言った、そうしてだった。
課全体でこの日から修羅場に入った、次から次に仕事が来たり依頼が来て手分けして対処にあたったが。
「えっ、大谷さんいないの?」
「大谷さんじゃないとわからないのに」
「参ったな、代わりに誰かやってくれる?」
「大谷さんの代わりにお願いします」
他の課からどんどん人が来てだった。
仕事を言ってくるが皆何が何かわからないことも多く。
文字通りの天手古舞の有様になった、課長の牧田もだった。
社内を必死に動き回った、だが痛風の為。
「課長、無理しないで下さい」
「足の親指の付け根また痛むんですよね」
「肩が触れ合っても痛いんですよね」
「それじゃあ無理です」
「いや、薬は飲ん
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