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展覧会の絵
第三話 いかさま師その十三
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体的にはその父親のことだ。彼の実の父親はかつてフランス外交を一手に担ったタレーランではないかと言われているのだ。辣腕家だが好色でしかも謀略家だったことで有名だ。
「それでも彼の絵にはね」
「そうしたものもあるんだ」
「マイナスだけじゃないんだ、人は」
「プラスもあるから」
「そう、だから人はいいんだよ」
 こう話すのだった。
「魅力的で。神もね」
 まただった。神を話に出した彼だった。
「愛されているんだよ」
「絵も神様なんだ」
「そう、全ては神が司っておられるから」
「何かありとあらゆるものになんだね」
 神が関わっているとだ。部員は述べた。
「そうなんだね」
「その通りだよ。例えば僕の手が動けなくなる」
 十字はいささか不吉な例えをだ。あえて話に出した。
「そうなればもう絵は描けないよね」
「若しくは口で描くか」
「そうした人もいるけれど実際にね」
「そうだね。手が動かなくなるとね」
「絵は描けなくなるから」
 現実的な話からだ。十字はこう例えを出したのである。
「神が僕の手を描ける手にしているからこそ」
「今もそうして描けるんだね」
「そうなんだ。だから僕はね」
 敬虔な声になった。そうして。
 その絵を観つつだ。彼にこの場で最後に述べた。
「神に感謝しているんだ」
「あらゆることに対して」
「そうなんだよ」
 実際に神に感謝しつつ述べる十字だった。そうした話をしてだった。
 彼は絵を観ていた。そうしてこれから彼がどう神の為に働くかもだ。一人考えるのだった。


第三話   完


                   2012・1・22
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