第十幕その九
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「旦那さんの妹婿のね」
「設定は変えてるね」
「それも面白い具合に」
「そうして書いていたんだね」
「どうもお姉さんの奥さんとは折り合いが悪くて」
それでというのです。
「いい印象を持っていなくて」
「それでなんだ」
「旦那さんの実家のお婿さんもだね」
「いい人じゃないんだね」
「そうなのね」
「そうなんだ、融通の利かない頑固な人としてね」
そうした人としてというのです。
「出ているよ」
「あまりいい人じゃなくて」
「そうした人として出て」
「それでなんだ」
「作品の中じゃよく書かれていないんだ」
「そうなんだ、それにね」
先生はさらにお話しました。
「旦那さんはどうもね」
「ああ、織田作さん」
「織田作さん自身なんだ」
「そうなんだ」
「そんな節があるね、結核にもなっているし」
このこともあってというのです。
「僕が思うにね、そして織田作さんは奥さんも書いているよ」
「若しかして競馬?」
「競馬のお話聞いてそう思ったけれど」
「そうだったの?」
「奥さんは」
「そうみたいだよ、愛妻家だったから」
その為にというのです。
「奥さんをずっと覚えていてね」
「作品にも出していたんだ」
「お姉さんだけでなくて」
「奥さんも出していたんだ」
「織田作さんは」
「うん、織田作さんはね」
善哉を食べつつさらにお話しました。
「大阪の人を書いていたけれど」
「男性ばかりじゃない」
「女性もだね」
「大阪の色々な人を書いていたんだね」
「あの人は」
「そうだよ、中には四十で孫が出来た人もいるよ」
織田作さんの作品の中にはというのです。
「息子さんが主人公でやっぱり流れ流れてね」
「彷徨って」
「そうしてだね」
「息子さんが結婚して子供が出来て」
「そのうえで」
「そうなったんだ、男の人も女の人も彷徨って間違いもして」
そしてというのです。
「最後はこのお店で善哉を食べる様に」
「落ち着くんだね」
「ある場所に」
「そうなるんだね」
「流れ流れて仮寝の宿にっていうけれど」
先生はこうも言いました。
「その仮寝の宿がね」
「居場所になるんだね」
「それぞれの人の」
「そしてそこに落ち着いて」
「それで暮らすんだね」
「そうだよ、ただそうなるにも」
流れていってある場所に落ち着くにもというのです。
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