第三話 いかさま師その十二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
部員にだ。また話したのだった。
「彼等に黒幕がいるのなら神が御存知だね」
「何か佐藤君の話って神様が出ることが多いね」
「教会にいるからね」
「そうだよね。けれど神様って」
「神はおられるよ」
それは間違いないというのだ。神がいることはだとだ。
十字の言葉はここでは感情が出ていた。それは確信という感情だ。
その感情を述べてからだ。そしてだった。
今絵を描き終えた。そしてこう部員に話した。
「この青年には彼等が悪人だとはわからないけれど」
「それでも?」
「神は御存知だよ。そして見せてくれるんだよ」
「僕達にこうして」
「そう、神の僕にね」
そうするというのだ。彼が話すのはこのことだった。96
こう話してだった。彼はその絵を見つつまた述べた。
「見せてくれるんだよ」
「悪事をしてもわかるんだね」
「悪行も善行も完全には隠せないんだよ」
「完全には」
「神様は何もかもをお見通し」
「悪人にはそれがわからないんだ」
神の目、それをだというのだ。
「だからこそ悪事を犯すんだよ」
「けれど悪事は神様が見ているから」
「必ず裁かれるよ」
ここでも確信を以て話す十字だった。
「間違いなくね」
「ううん、深いね」
「深いかな」
「だってさ。悪人は常に神様が見ててだよ」
部員は実際に深い思考の中に己を入れて十字に述べてきていた。
「それで裁かれる、それは決まっているって」
「当然だと思うけれど」
「だから。哲学的っていうかね」
こう十字に話していく彼だった。
「そういうのだからね」
「哲学ね」
「うん、そう思うから」
「哲学と言うけれどね」
十字はその哲学についてもだ。彼に答えた。
「特に難しく考える必要はないんだよ」
「あれっ、そうなの?」
「そうだよ。哲学は人間の考えだから」
「それでなんだ」
「そう。人が神について考える」
ここでも神だった。十字の最初に神があるのは間違いなかった。
それでだ。こう述べるのだった。
「それこそが哲学だからね」
「それだけでいいの?」
「そう、それだけでいいものだから」
「じゃあ誰でも哲学者になれるの?」
「なれるよ。欧州の哲学もそこからはじまったから」
人が神について考える、全てはそこからだというのだ。
こう話してなのだった。十字はだ。
彼が描いたいかさま師の絵を観つつだ。彼にさらに話すのだった。
「この絵も深い哲学があるんだよ」
「それは何となくわかるよ、僕も」
「そうだね。人の悪があるから」
「悪について考えるのも哲学になるんだね」
「その通りだよ。全てね」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ