失敗魔法
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「見ての通りがらんとしてるから、どこでもどうぞ」
「少しお話したいことがあるので、カウンターで……その……」
紗夜はチラチラとウィザードを盗み見ながら、カウンター席に着いた。彼女の向かい側に立ったウィザードは、メニューを取り出す。
「それじゃあ、注文は? 分かってると思うけど、うさぎは非売品だよ。と言っても、今はマスターのところにいるけど」
「いえ……アイスコーヒーでお願いします」
「分かった。ちょっと待っててね」
ウィザードはそう言って、再びコネクトを使う。
なかなか手入れの時間がないなと思いながら、魔法陣の中よりコーヒーメーカー(少し歩いたところに置かれている)を取り出す。
「……」
「な、何?」
「いい加減、変身を解除したらどうですか?」
「ん? ん……」
ウィザードは焙煎を行いながら、首を傾げた。
「ほ、ほら。たまにはウィザードに変身したままの接客も……面白いかなあって……」
「単純に落ち着かないですね」
紗夜がハッキリと言い切った。
「でもほら。こうやって見ると、何かそれっぽくない?」
「それっぽいって……」
ウィザードは棚からシェイカーを掴み、材料を入れて振った。
「様になってない?」
「自分で言う時点で、的外れだと思いますよ」
「あはは……言ってて自分でもそう思う。そもそも紗夜さん未成年だし」
ウィザードは同意した。シェイカーを洗い場の傍に置き、改めてコーヒーメーカーからアイスコーヒーを淹れる。
「はい、紗夜さん。アイスコーヒー」
「ありがとうございます……うっ……!」
コーヒーを口に含んだ紗夜は、小さな悲鳴を上げた。
その様子を見て、ウィザードはカウンター席に設置してあるシュガーポケットを差し出した。
「あ、苦かった? 砂糖あるよ?」
「大丈夫です……」
紗夜はウィザードの手を制し、そのまま、コーヒーをもう一度口にする。
「それでもやっぱり、苦いですね……」
「まあ、そういうものだからね。あ、よかったらケーキもあるよ」
商魂を見せたウィザードは、メニューを開いた。
一瞬だけ目を輝かせた紗夜は、すぐさま口を曲げた。
「い、いいえ。今は少し」
「要らない?」
「あまり空腹ではないので。それより、いいですか?」
紗夜は咳払いをした。
「その……松菜さんに相談があって。よろしいですか?」
「俺でよければ」
「ありがとうございます。実は、生徒が一人行方不明になったんです」
「行方不明?」
穏やかな響きじゃない、と考えながら、ウィザードは彼女に先を促した。
「先々月から。家にも帰っていないそうです。先月の間は先生方が探していたんですけど、春休みなのもあっ
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