暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
失敗魔法
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「見ての通りがらんとしてるから、どこでもどうぞ」
「少しお話したいことがあるので、カウンターで……その……」

 紗夜はチラチラとウィザードを盗み見ながら、カウンター席に着いた。彼女の向かい側に立ったウィザードは、メニューを取り出す。

「それじゃあ、注文は? 分かってると思うけど、うさぎは非売品だよ。と言っても、今はマスターのところにいるけど」
「いえ……アイスコーヒーでお願いします」
「分かった。ちょっと待っててね」

 ウィザードはそう言って、再びコネクトを使う。
 なかなか手入れの時間がないなと思いながら、魔法陣の中よりコーヒーメーカー(少し歩いたところに置かれている)を取り出す。

「……」
「な、何?」
「いい加減、変身を解除したらどうですか?」
「ん? ん……」

 ウィザードは焙煎を行いながら、首を傾げた。

「ほ、ほら。たまにはウィザードに変身したままの接客も……面白いかなあって……」
「単純に落ち着かないですね」

 紗夜がハッキリと言い切った。

「でもほら。こうやって見ると、何かそれっぽくない?」
「それっぽいって……」

 ウィザードは棚からシェイカーを掴み、材料を入れて振った。

「様になってない?」
「自分で言う時点で、的外れだと思いますよ」
「あはは……言ってて自分でもそう思う。そもそも紗夜さん未成年だし」

 ウィザードは同意した。シェイカーを洗い場の傍に置き、改めてコーヒーメーカーからアイスコーヒーを淹れる。

「はい、紗夜さん。アイスコーヒー」
「ありがとうございます……うっ……!」

 コーヒーを口に含んだ紗夜は、小さな悲鳴を上げた。
 その様子を見て、ウィザードはカウンター席に設置してあるシュガーポケットを差し出した。

「あ、苦かった? 砂糖あるよ?」
「大丈夫です……」

 紗夜はウィザードの手を制し、そのまま、コーヒーをもう一度口にする。

「それでもやっぱり、苦いですね……」
「まあ、そういうものだからね。あ、よかったらケーキもあるよ」

 商魂を見せたウィザードは、メニューを開いた。
 一瞬だけ目を輝かせた紗夜は、すぐさま口を曲げた。

「い、いいえ。今は少し」
「要らない?」
「あまり空腹ではないので。それより、いいですか?」

 紗夜は咳払いをした。

「その……松菜さんに相談があって。よろしいですか?」
「俺でよければ」
「ありがとうございます。実は、生徒が一人行方不明になったんです」
「行方不明?」

 穏やかな響きじゃない、と考えながら、ウィザードは彼女に先を促した。

「先々月から。家にも帰っていないそうです。先月の間は先生方が探していたんですけど、春休みなのもあっ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ