第118話『鉛の雨』
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雨避けのために、魔導祭の会場の天井代わりとなった結月の氷壁。だがそこに、雨粒のような"何か"が絶え間なく降り注ぐ。
そう、これは決して雨粒ではない。ただの雫ならば、結月の作った氷がこんなに重い音を立てて抉られるはずがないのだから。
「やっぱり……!」
この状況を予見していた晴登は、間一髪だったと息をつく。
しかし、安心するにはまだ早い。結月の氷壁ならば平気だと思っていたが、想像以上に氷が削られている。自然現象の雨にそんな威力があるとはとても思えない。
「なら銃撃……? でもどこから……?」
氷越しでよく見えないが、誰かが上で銃を撃っている可能性はある。が、機関銃レベルじゃないとこんな音はありえないし、そもそもどうやってあんな高い所に登ったというのか。謎は深まるばかりである。
「おい、何だよこの音!」
「何が起こってるんだ!?」
「みんな伏せろ!」
「きゃあああああ!!」
会場中に響き渡る、氷が削られる甲高い音。しかもそれがドラミングのように終始鳴り続ける。人々の恐怖を煽るには十分すぎるコーラスだ。
「結月! 壁は持つ?!」
「今張り直してる!」
とにもかくにも、まずはこの脅威を退けなければならない。晴登は再び結月にお願いし、氷壁を再構築させる。重ね重ね無理をさせて本当に申し訳ない。
だが、これからどうする? 結月が氷壁を維持し続ければしばらく持つだろうが、それはジリ貧でもある。まだこの雨のようなものの正体もわからないし、待つのは得策ではない。
せっかく最悪の事態を防ぐことはできたというのに、爪が甘かった。次にやるべきことは──
「皆さん! 早く避難してください!」
「屋内に入れば大丈夫だ!」
「!」
晴登がそこまで考えたところで、大きなかけ声が耳に届く。見ると、【覇軍】のメンバーが会場にいる人々の避難誘導を行なっていた。
そうか、それが正解だったか。耐えることだけを意識して、そこに考えが至らなかった。この雨については、皆が避難を終えて安全を確保してからじっくり考えればいい。
よし、やることが決まれば後は行動するのみだ。
「部長、俺達も行きましょう!」
「えぇ? 正直まだ状況がよくわかってねぇんだけど……それがいいみたいだな」
成り行きで終夜を説得し、続々と逃げる人たちの後ろに並んで屋内に逃げ込もうとした、その時だった。
──パァン!
その乾いた音を聴いた瞬間、全員の動きが止まった。今のはまさか……本物の銃声?
「「きゃあああ!!!」」
「「うわあああ!!!」」
「!!」
音の正体に気づいた時には、逃げていた人々が逆走していた。わざ
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