第118話『鉛の雨』
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わざ屋外の危険地帯に戻って来たということは、"屋内も危険地帯"ということに他ならない。
「全員動くな。動いた奴から殺す」
そして逃げる人々の最後尾に現れたのが、肩に銃を担いだ、漆黒の重装兵だった。鎧というかアーマーというか、とにかく全身が分厚い防具で固められている。声からして、中身は男だろうか。背丈は、装備を含めると2mはある。加えて彼の後ろや、向かいにあるもう1つの出口からもぞろぞろと同じ装備の兵たちが現れた。数は合わせて50人といったところか。
「殺すって……」
そんな兵隊の先頭に立つ兵士から放たれた恐ろしい命令を、晴登は口の中だけで繰り返す。いきなりの出来事すぎてまだ理解が追いついていない。
それはここにいる誰もが同じだった。冷静であれば大人しく従っていたはずの命令だが、恐怖によりパニックを起こした人が反射的に悲鳴を上げる。
「いやあああ──がふっ」
「叫ぶのもダメだ」
そして叫んだ人が、銃声と共に静かになった。その人はその場にバタリと倒れ伏し、ドクドクと流れた血が地面に滲んでいく。
なんと一切の慈悲も躊躇もなく、重装の男は銃を撃ったのだ。
その惨状が悲劇の幕開けとなった。
「うわあああ──」
「たすけ──」
「やめ──」
怯えて声を上げた人々が、次々と銃の的になっていく。乾いた銃声とバタバタと人が倒れる音が、未だ鳴り続ける氷が穿たれる音の間隙に入り込んだ。
──突然現れて、躊躇なく発砲を行なう集団。晴登の知識では、彼らを"テロリスト"と形容するしかなかった。
「この下衆共が!」
動くと殺される。誰もがそんな恐怖と戦う中、1人の金髪の青年が雄叫びを上げながら動いた。その両手には"聖剣"が握られており、真っ先にリーダー格の男の元へと飛び込む。
「動くなって言ってんだろ!」
「ふっ!」
「なにっ!?」
男が迫り来るアーサーに向かって銃を撃つも、彼は器用に剣で弾を弾いた。恐るべき動体視力と身体能力である。
そしてそのまま彼もまた躊躇うことなく、重装の上から男の首を斬り落とさんと剣を振るった。
「──おっと、それは待ってくれないかな」
「っ!?」
しかしその目論見は叶わず、中性的な声と共に現れた小柄の人物が、なんとアーサーの振るった剣を右手だけで受け止めたのだった。
その人物は黒色のパーカーで全身を隠し、唯一見えるのは、剣を受け止めようとするも背が低いために上に伸ばすことになった右腕のみ。そんな不自然な状態なのに、まるで時が止まったかのように、アーサーの剣はピクリとも動かない。
カタカタと、アーサーが力むのに合わせて剣が音を鳴らすが、それを受け止め
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