第三話 いかさま師その七
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雪子に応える。そして言ったのだった。
「そうよね。それはね」
「浮気は絶対に駄目よね」
「そう思うわ。私も」
「だよね。望ってそういうところ真面目よね」
「人間としてやっちゃいけないことだろ」
また言う彼だった。
「そんなことはな」
「そうそう」
そんな話をする三人だった。しかしだ。
その中でだ。春香だけは蒼白だった。その顔でその場にいるのだった。
その三人を見てだ。十字は違和感を覚え続けていた。しかし今はだった。
ただ見ているだけだった。そうしてだ。
やり取りが終わり雪子が去り二人が食事を再開したのを見届けてからだ。そのうえでだ。
クラスの扉のところから去った。そして廊下を歩いているとだ。
薄い灰色のスーツに黒めのネクタイを着ただ。黒い髪を端整に整えた眼鏡の、痩せた長身の男を前に見た。その彼の方からだった。
十字にだ。こう声をかけてきたのだった。
「君は確か」
「何でしょうか」
「転校生の佐藤十字君だったかな」
「はい、そうです」
その通りだとだ。十字はその彼に礼儀正しく答える。見ればだ。
その顔立ちも端整である。穏やかな口調であり紳士的だ。しかしだ。
十字にはわかった。その端整かつ紳士的なものは仮面でだ。
その裏には歪な、人としての道を踏み外した下種な何かがある。彼はそのことを察した。
しかし察しただけで具体的にはどういったものかはまだわからなかった。彼はあくまで察しただけだ。
しかもそのことを顔に出さずにだ。彼はこうその男に答えた。
「この学校に来ました。宜しくお願いします」
「美術部で話題になっているそうだね」
その彼は十字にだ。紳士的にさらに言ってきた。
「それはいいことだけれど。ただ」
「ただ?」
「料理にも興味はあるかな」
何気にだ。彼に言ってきたのだった。
「それはどうかな」
「いえ、料理は」
それはだとだ。十字は彼に淡々と返す。
「特に」
「そうなんだね」
「過度に贅沢な料理は慎む様にしています」
そうしていると答えるのだった。
「ですから料理はです」
「凝ってはいないんだね」
「はい、それに料理を作る趣味もありませんし」
このことも述べるのだった。
「ですから」
「そうか。それは残念だね」
「それでなのですが」
部の勧誘の話が終わってからだ。十字はだ。
目の前にいる彼にだ。こう尋ねたのだった。
「この学園の先生ですね」
「うん、そうだよ」
その通りだとだ。彼も答える。
「清原っていうんだ」
「清原先生ですか」
「そう、清原一郎というんだ」
こう十字に名乗ったのだった。
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