第一章
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ホテルと旅館
小林遥は八条ホテル熱海の責任者の娘である、通っている高校でもそのことはよく知られている。だが。
クラスメイトの中原勝平にある日こう言った。
「あの、あんたの旅館今度アルバイト募集しているわね」
「そろそろシーズンだからな」
中原は遥にすぐに応えた、濃紺のブレザーと黒のスラックスに青のネクタイと白いブラウスが似合っている一七二位の背の眼鏡の青年だ。色白で細面である。
「そうしてるよ」
「じゃあ私願書持って行くわね」
「えっ、けれどお前」
「ホテルの責任者の娘だろって言うのよね」
「そうだよ」
一六六の高校女子にしては長身で胸が目立ち黒の短くしている制服のスカートから見事な脚を見せている遥に言った、きりっとしたやや狐目で紅の一文字の唇と高い鼻、茶色の長い髪の毛に見事な胸を持つ彼女に言葉を返した。
「だったらそっちのホテルでな、普段からアルバイトで働いてるだろ」
「レストランでね、けれど夏の間は他の場所でってね」」
「親父さん言ったのか」
「そう、だからね」
「うちの旅館にか」
「行けって言われたのよ」
遥はこう話した。
「それも社会勉強しかも将来の就職にも役立つって」
「お前ホテルで働きたいのか」
「そっちの業界でね、それでよ」
「うちの旅館でか」
「そうよ、あんたの旅館も八条グループだしね」
「そうだけれどな」
中原の家が経営している旅館もそうなっている、主にグループの社員とその家族の慰安場所となっている。
「そのこともあってか」
「あんたのところで働かせて欲しいの」
「わかった、しかしホテルと旅館だとな」
「全く違うわよね」
「それでもいいよな」
「ええ、お願いするわ」
クラスでこう話してだった。
遥は中原の家が経営と管理を任されている熱海のいこうという旅館に願書を持って行って面接を受けてだった。
採用してもらい夏は住み込みで働くことになった、遥は旅館の服である着物を着て掃除をしたり膳を運んだり布団を敷いたりしたが。
その彼にだ、仕事の時の服を着た中原が尋ねた。
「やっぱりホテルと違うだろ」
「全然ね。日本と欧州っていうか」
「その違いがあるだろ」
「ええ、同じホテル業界のお仕事だけれど」
それでもというのだ。
「本当にね」
「基本の文化が違うからな」
中原は一緒に玄関を掃除している遥に話した。日の出と共にその仕事をはじめているのだ。
「それでだよ」
「同じ業界でもね」
「何かと違うんだよ」
「そうよね」
「ああ、お前のとこの親父さんも多分な」
「そういうことも勉強してもらう為に?」
「ここにって言ったのかもな」
こう言うのだった、そして。
ちらりと海の方を見た、そこにだ
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