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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
国都敗れる その3
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笑みを浮かべると、彼の独り言に返答した
「同志少尉、身籠(みごも)られた細君(さいくん)に無理させる必要はありません。
違いますかな」
曹長は、身重(みおも)のヴィークマンを気遣う
知らぬ間に独り言が漏れた彼は、己を恥じた

 ソ連大使館に佇む白磁色の大型戦術機
戦術機隊に周辺を囲まれても、身動(みじろ)ぎせぬ姿
ベルンハルト中尉は、その様から、帝王を思わせる風格を感じた
彼は一か八かの勝負に出た
もし、ゼオライマーという機体ならば、操縦者は木原マサキ
一度、面識のある人物だ
彼は部隊の仲間に通信を入れた
「1番機より、中隊各機へ。所属不明機を説得する。
自分よりの指示があるまで衛士の攻撃は禁ず。
繰り返す、衛士の攻撃は禁ずる」
「ソ連大使館への対応は如何しますか」
彼は、画面に映る衛士を見る
「3番機、余計な事は考えるな。
良いか、市街地故に擲弾や散弾の使用は制限するように」
僚機から心強い返事が返ってくる
「了解」
彼は、(うなづ)
指で、航空無線機の国際緊急周波数121.5MHzにダイヤルを回す
彼は英語で答えた
「警告する。貴機はDDR(ドイツ民主共和国)領内を侵犯している。速やかに現在地から退去せよ」
白磁色の機体が、ゆっくり此方に向く
即座に、向こうから通信が入った
男の高笑いが聞こえる
そして、ドイツ語で話しかけてきた
「この天のゼオライマーに、何の用だ」
ゆっくりと機体の右手が上がり始める
「此方に攻撃の意思はない。
操縦者は木原マサキ曹長であろう。違うか」
彼は賭けに出た

男は応じる
「如何にも、俺は木原マサキだ」
彼の応答に、マサキは応じた
暫しの沈黙が起きる
画面にマサキの画像が映る
不敵の笑みを浮かべ、此方を見る
「何時ぞやの懇親会(パーティー)以来だな」
哄笑する声が響き、彼の心を騒がせる
「貴様等なりの歓迎と受け取ろう。
だが、俺には構わず遣るべき事がある」
機体の右手を挙げ、食指で共和国宮殿の方角を指し示す
「向こうから来るヘリコプターを撃退するのが先であろう。
貴様等が望むのであれば、俺はいつでも相手になってやる」
再び哄笑する声が聞こえる

「もっとも無残な姿を晒すだけであるから、止めて置けば良い」
マサキは、画面越しに映る美丈夫(びじょうふ)に応じた
あの時、見た碧眼(へきがん)の美しい()
忘れもしなかった
「今日の所は見本(サンプル)だ。
ソ連大使館と戦闘ヘリだけで勘弁してやる」
彼は、右手で髪をかき上げる
「天のゼオライマーの威力、特等席で観覧できる喜び。
全身で感じるが良い」
数機の戦闘ヘリがこちらに向かって、ロケット砲を放つ
面前の機体は気付くのが遅れた模様だ……
借りを作ってやろ
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