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展覧会の絵
第三話 いかさま師その二
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 そしてそのうえでだ。女子達にこうも言うのだった。
「だから。人の道を踏み外した輩はね」
「そうした人は?」
「どうするっていうの?」
「神が裁くよ」
 そうなるというのだ。
「必ずね」
「んっ?何か」
 十字のその言葉を聞いてだ。女子達はだ。
 妙なものを感じ取ってだ。こう言ったのだった。
「急に様子変わったけれど」
「何かあったの?」
「別に何もないよ」
 それはないとだ。十字は答えた。そしてだ。
 また聖書に目を通しながらだ。彼女達に言ったのである。
「それで聖書について聞きたいことがあったら」
「その時は?」
「何でもっていうのね」
「そう。聞いてね」
 こう彼女達に言ってだ。そうしてこうも言うのだった。
「僕の知っている限りのことを教えさせてもらうから」
「佐藤君の知っている限り」
「その限りは」
「そう、その限りはね」
 これが十字の言葉だった。
「そうさせてもらうよ」
「全部は知らないの?」
「キリスト教のことは」
「神の御心はとても深遠だから」
 十字は遠い目になり述べた。
「だからね」
「全部は知らないの」
「神の御心を全て知るということは」
 神の僕であることを意識してだ。十字は女の子達に話していく。
「それは人にとっては不可能なことなんだよ」
「けれどそうして聖書読んでるのよね」
「そうしてるのに?」
「神様のことって全部わからないの」
「そうなの?」
「そう。それでもね」
 だがそれでもだとだ。彼は言うのだった。
「その御心を少しでも多く知ることはできるから」
「だからそうして聖書読んでるのね」
「ラテン語のものも」
「そう。外典も偽典も読むし」
 キリスト教は聖書だけで成り立ってはいない。他にも多くの典があるのだ。だからこそキリスト教は非常に奥の深い宗教になっているのだ。十字はそうしたものも読んでいた。
 そしてだ。さらにだった。
「後はアウグスティヌスやトマス=アクィナスも読むよ」
「うわ、教科書に出て来る人じゃない」
「そうした人達の本も読んでるの」
「まるで学者みたい」
「学者。学者というのはね」
 欧州の学者のことだった。十字が言うのは。
「まずは神を学ぶ人達なんだ」
「あれっ、ただお勉強するだけじゃないの」
「それが学者じゃないの?」
「違ったの?」
「そう。日本ではそれぞれを学ぶけれど」
 今度は日本の学者と欧州の学者の違いになった。
「欧州の学問はまずは神からはじまるから」
「じゃあ歴史とかそういうのも?」
「国語も音楽もなの?」
「そう。言語はラテン語からはじまって」

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