第二部 1978年
ミンスクへ
国都敗れる その2
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は、三名の閣僚と共に、ここに残る決意をした
間違いなく、あのヘリは暗殺隊……
分散して居れば、最悪自分の遺志に続く者が出るかもしれない……
男は目を瞑り、独り言を言う
「タバコも、後10本か」
国防相が漏らす
「買い溜めでもして置けば良かったよ」
室内に笑い声が響く
精一杯の痩せ我慢であろう
複数の足音が聞こえる……、彼等は覚悟した
ヘリより降りた暗殺隊が近づいて来るのだと……
ノックも無しに、ドアが開く
男は、残り少ないタバコを箱から出すと火を点けた
「議長、此処に居りましたか。
お迎えに上がりました」
白色で両前合の上着に、赤い側線が入った濃紺のズボン
場違いな将官礼服を着て現れた禿髪の男
ソ連派の首魁、クレムリンの茶坊主と評される、エーリヒ・シュミット保安少将、その人であった
開け放たれたドアの向こうには、ソ連の1969年制定野外服を来た人物が数人立つ
鉄帽を被り、硬い綿布製の装備品を支える合皮製ベルトを締め
『キルザチー』と言われる合皮製長靴を履いている
首相が揶揄う
「君は、何時ソ連の茶坊主になったのだね」
彼は無表情のまま、懐中より見慣れぬ大型拳銃を右手で取り出す
「手荒な真似はしたく御座いません……」
その刹那、用心金から引き金に食指を動かす
彼等の背後に掃射する
電気鋸の様な音と共に、壁が剥がれ落ち、埃が舞う
凍り付く首相に代わり、議長がシュミットに尋ねる
「貴様、何が欲しい。
言ってみろ」
茶色の官帽型軍帽を被り、薄く色の付いた眼鏡を掛けた顔が動く
「私が欲しいのは、この民主共和国です」
男は哄笑した
「良かろう。1600万人民を餓えさせぬ自信があるのか……」
シュミットは、困惑した
「対外債務の実額はどれだけあるのか……」
彼は、男の問いから逃げた
国防相も同調する
「今後の国防安保の展望はどうするのだ……」
彼は沈黙を続ける
「言えんのか」
国防相の問いには答えなかった
遠くから駆け寄ってくる足音がする
兵達は気にせず此方を見ている
自動小銃は、釣り紐で担ったままだ
外相も、賭けに出た
「対ソ関係は最悪。
今更、胡麻を擦っても遅いぞ。
貴様のような木っ端役人が騒いだところで、国際社会は助けてくれぬ。
現実は、甘くない」
シュミットは、自動拳銃の引き金を引く
撃鉄の音ばかりで、弾が出なかった
20発の装弾は全て打ち尽くした後であるのを、忘れていた
轟音が響き、怒声と共に男達が乱入してきた
「シュトラハヴィッツ君!」
男は叫んだ
勤務服の上から大外套を羽織り、小銃を構えたシュトラハヴィッツ少将が仁王立ちする
シュミットは素早く弾倉を変えようと、左手
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