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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
乱賊 その2
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。仔細は後程話す」
そう言うと、紙巻きたばこを胸より出して、火を点ける
「氷室とゼオライマーが消えたのは無関係ではあるまい。私はベルリンの議長公邸に直電を入れる……」

「貴様、ここをどこだと、思っている」
大使の話を遮るように彩峰が叫ぶ
後ろを振り返ると、ドブネズミ色の背広に、茶色のトレンチコート姿の男が立っている
「まさか、皆さんお揃いでこんな場所にいるとは……」
男は、声の主を見る
「いやはや、流石、青年将校の纏め役と名高い彩峰大尉殿ですな……」
マフポケットに腕を入れ、室内であるのにも関わらず中折帽を被っている
「情報相の使い走りが、何の用かね……」
大使は怪訝な表情をする
「私は、しがない只の会社員。
商人という関係上、シュタージとの少しばかりの伝手が御座います。
その線で、皆様のお手伝いを、と考えて居ります」
怪しげな男は、笑みを浮かべながら、 諧謔(かいぎゃく)(ろう)した
 彩峰は、右の食指で男を指差しながら罵った
「胡散臭い奴め。
何が、個人的な伝手だ。
貴様等は、只踊らされているだけだ」
男は、マフポケットより両手を差し出すと、掌を彼の前に差し出す
「その様な見方をされるとは……、驚嘆(きょうたん)ですな」
右腰から私物の小型自動拳銃を取り出す
(たわ)けた事を抜かすのも、いい加減にしろ。
先の大戦の折も、FBIに踊らされて、あわや無条件降伏という恥辱を得ようとしてたではないか」
男は、拳銃を突き付けられながらも涼しい顔をする
左腕の腕時計を見る
「失礼、貴方方とてCIAの手の上に有るとの変わりませんがな……」
そう言い残すと、彼の左脇をすり抜け、奥へ消えて行った
「この恥知らずが」
大使が、恨めしそうに吐き捨てる
「閣下、取り敢えず……」
彩峰が尋ねる
「彩峰君、国防省に連絡を入れなさい。事は急を要する」
脇を通り抜け、篁が、公電室に向かって行く
恐らく城内省へ、連絡を入れに行くのであろう
「私は、省に連絡を入れて、一時的にも彼を大使館職員の身分を与えるつもりだ」
奥で待機していた珠瀬が、何処かへ駆けて行く
彼は、耳を疑う
「本当ですか」
大使は、机に腰かけた
「ここまで、舐められた態度を取られるのは、我慢ならぬ。
状況によっては、我が国への最後通牒だよ」
腕を組んで、続ける
「我々は、剣は持たぬとは言え、戦士。
外交という戦場で、国際法という武器を用いて戦う戦士なのだよ」
(おもむろ)に、タバコを取り出し、火を点ける
「ソ連という国を、60年前の様に国際社会から追放してやろうではないか」
男の内心は、ソ連への深い憎悪に燃えた

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