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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
乱賊 その2
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しております」
彩峰は、脇に立掛けた刀を取り、立ち上がる
「少佐、馬鹿者共を説得して参ります」
椅子に腰かける駐在武官にそう告げると、部屋を小走りで出て行った
 
 彼は、途中で巌谷と(たかむら)に会うと、其の侭食堂に直行した
部屋に入ると、鉄帽を被り、野戦服姿で銃の手入れをする下卒達
彼等に向かって、彩峰は一括する
「貴様等、今からどこへ行こうと言うのだ」
彼の左手が、ゆっくりと軍刀に触れる
「どうしても行くと言うのなら、俺を切り捨ててからにしろ」
そう言うと、鯉口(こいくち)を切る
「駐独ソ連大使館に、乗り込みたくなる気持ちも分かる」
彼は、刀の柄に手を掛ける
「だが、それは我が国の国際的信用を地に落とすことにもなりかねない。
一番、その様な事を臨んでいないのは、ほかならぬ殿下だ」
篁が、彼の右手を力強く抑える
「大尉、お待ちください」
彼は、篁の一言で冷静になると、鞘に納めた
脇に立つ巖谷が、彼等に告げる
「状況次第では、貴様等は、主上(しゅじょう)に背く逆賊になる。
主上(しゅじょう)ばかりではない、殿下、政府、貴様等の故郷、親兄弟……。
失った信用は、金銀より価値の重たいものだと、考えられぬのか」
左手から刀を離した彼が告げる
「一度、下命されるまで、待て……」
兵達は、静かに銃を置いた

 彼等が休まる暇もなく、部屋に男が駆け込んでくる
作業服姿の整備兵は、肩で息をつくと、こう告げた
「駐機しているゼオライマーが、目前より消えました」
その場を震撼させた
「何だと!」
左手で刀を握りしめた彩峰が告げる
「奴の相方の氷室美久は、どこぞに居るのだ」
混乱する現場で、誰かが言った
「今しがた、彼女も消えました」
 
 唖然とする彼等に、篁が声を上げる
「まさか……、空間転移」
彩峰は、振り返り、後ろに立った彼に尋ねる
「何、空間転移だと……。どういう事だね」
彼は腕を組んで、答えた
「自分は、側聞しか知りませんが、ロスアラモスの研究所ではG元素を利用した戦術機開発が進められております。
新元素には未知の領域も多く、空間跳躍や大規模な重力偏差を発生させるとの試算が出されたと報告があります……」
目を見開いて、彼に問う
「まさか、ゼオライマーはそのG元素を内燃機関にしていると言うのか……」
彼は、正面を見据えたまま、続ける
「可能性は否定できません……。
木原自身がG元素の独占を図るためにハイヴを攻略しているのであれば、話の辻褄は合うかと……」
「それでは、氷室が消えた理由にはならん」
振り返ると、声の主は背広姿の男だった
「閣下、何方に居らしたのですか……」
男は、在ボン日本大使館の主、特命全権大使であった
「西ドイツ政府と、米領事館に行って居った
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