第二話 吸血鬼その六
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「僕はそう思うんだ。この絵を観てね」
「不幸は音もなく来る」
「それも後ろから」
「そして絡め取るんだ」
そういうものでもあるとだ。また二人に言う十字だった。
そしてだ。このことを話してからだった。彼はだ。
猛と雅にだ。こうしたことも告げたのだった。
「人にはその不幸を見ることができない。聞こえもしないよ」
「それでもなの?」
「そう、不幸は払い取ることができるんだ」
「できるのかな」
「そう、払い取り清めることができるよ」
これが二人への言葉だった。
「必ずね。神が清めて下さるから」
「神様ね」
その言葉にはだった。雅がだ。
いささか面白くない顔になってだ。こう十字に返したのだった。
「私も猛も悪いけれど」
「クリスチャンじゃないっていうのかな」
「ええ、そうよ」
だからだというのだ。その面白くなさそうな顔でだ。
だが十字はその雅にだ。この言葉で応えた。
「わかっているよ。それはね」
「私達がキリスト教徒じゃないってことが?」
「ううん、日本にクリスチャンが少ないことjは」
わかっているのはこのことだというのだ。
「それはね」
「そのことがわかっているっていうのね」
「そうだよ。そして僕はそのことを受け入れているんだ」
「よくわからないことを言うわね」
雅は十字の今の言葉の意味がわからずだ。そのうえでこんなことを述べた。
「クリスチャンがどうとかって」
「そういう問題じゃないからね」
「そういう問題じゃない?」
「悪は。邪悪はね」
十字の端整な、中性的な美貌をたたえたその顔に表情はない。何処か仮面か人形を思わせる。その顔で淡々としてだ。彼は語るのだった。
「信仰に関わらず滅ぼさなければならないから」
「悪は許さないっていうのね」
「神は。信仰以上に悪を許されないんだ」
そうだとだ。彼は雅に話すのだった。
「それそのものをね」
「じゃああれなのかしら。悪い奴はキリスト教徒でなくとも神様がやっつけるのかしら」
「そうだよ」
まさにその通りだと。十字は述べた。
「神様はそうされるんだ」
「潔癖症っていうのかしら」98
雅は神のその話を聞いて少し考える顔になり述べた。
「それは」
「神に穢れはないよ」
潔癖を超えた、完璧なものだというのだ。
「一切ね。だからね」
「邪悪を許さないのね」
「人は大なり小なり善であり悪であるけれど」
「それでも邪悪はなの」
「邪悪に染まった輩を。神は決して許さないんだ」
その仮面の如き顔で話していくのだった。
「それが神なんだ」
「邪悪、ね」
「そう。神は邪悪を決して許されな
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