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展覧会の絵
第二話 吸血鬼その三

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 自分の手拭で顔の汗を拭っている雅がだ。こう言ってきたのだった。
「猛、いい?」
「あっ、雅」
「練習終わったから」
 それでだとだ。雅は猛に言ってきたのだ。
「帰りましょう」
「う、うん」
 猛はだ。直立不動にはならなくとも背筋を伸ばした感じになりだ。そのうえでだ。
 雅に応えてだ。そして言うのだった。
「じゃあ今から着替えるから」
「急いで」 
 一言でだ。雅は猛に告げた。
「道場に帰ったらまた稽古よ」
「わかったよ。それじゃあ」
 こうしてだった。猛はだ。
 すぐにだ。道場の更衣室に入って着替えてだ。それでだ。
 雅と一緒に帰ろうとする。その彼と共に着替えながらだ。
 部員達はだ。また彼に言うのだった。
「なあ、御前等許婚だよな」
「それでそれか?」
「完全なかかあ天下だけれどな」
「それでいいのかよ」
「そんなこと言っても」
 まただ。困った顔で返す猛だった。着替えながらその顔になる。
 そしてその顔でだ。こう彼等に返した。
「子供の頃からこうだし」
「ずっとなんだな」
「あいつに主導権握られてるんだな」
「子供の頃なんてもっと酷かったんだよ」
 そうだったというのだ。
「いつも泣かされててさ」
「ああ、そうだろうな」
「それ聞いたよ」
 部員達も猛のその話に納得した顔で頷く。
 そのうえでだ。こう彼に言った。
「もうそれこそ毎日みたいにだったんだろ?」
「宮本にいじめられてて」
「うん、本当に毎日だったよ」
 実際にそうだったと述べる猛だった。過去を思い出し暗い顔にもなる。
「大変だったよ」
「で、今もなんだな」
「向こうの方が上なんだな」
「そうなんだよね。このままだと」
 どうかというのだ。猛は俯き暗い顔のままで話していく。
「僕が道場継ぐけれど」
「それでもあれだろ。あいつの方が強いだろ」
「それもかなり」
「うん、だからね」
 それでもだというのだ。
「僕もどうしたらいいか困ってるんだ」
「強くなったらいいだろ」
 ここで部員の一人が彼にこう言ってきた。
「もっとな」
「空手をだよね」
「そうだよ。強くなればいいだろ」
「それができればいいんだけれど」
「難しいか」
 その彼の浮かない表情、それに声を聞いてだ。それでだった。
 その部員もだ。難しい顔になって言った。
「それは」
「うん、やっぱりね」
「まあそれでもな。空手はな」
 その話をするのだった。
「御前それなりに強いからな」
「強いかな」
「腕はいいぜ」
 それは確かだというのだ。
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