第十五話 夢があるからその三
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「人を警戒しないし仲間のピンチは助けに来るし」
「それでなの」
「もう銛を刺したら」
それでというのだ。
「後は出血多量で死んで浜辺に打ち上げられるの待てばよかったから」
「何か本当に簡単そうね」
「うん、逃げることも隠れることもしないで」
達川はさらに話した。
「戦うこともしないから」
「平和主義だったの」
「完全な草食でね」
昆布が主食であったという。
「七メートルとか九メートル位あって」
「滅茶苦茶大きいわね」
「ジュゴンやマナティーの仲間でね」
それでというのだ。
「ああした生きものよりずっと大きくて」
「動きが鈍くて」
「そうしたこともしなかったから」
戦うことはおろか逃げることも隠れることもというのだ、ただ海面にいて昆布を食べているだけの生きものだったのだ。
「もうどんどん乱獲されて」
「いなくなったの」
「しかも肉も脂も美味しくて」
それでというのだ。
「余計にね」
「乱獲されたのね」
「それでさっきも言ったけれど仲間を助けるんだ」
それがステラーカイギュウの習性だったのだ。
「ロープを絡められたり銛を刺された仲間がいたら」
「助けようとしたの」
「集まってね、特に雌だったら」
被害を受けている個体がというのだ。
「前足で必死に抜いたりほどこうとしたり」
「マナティーとかジュゴンって指ないわよね」
一華はステラーカイギュウがこういった生きものの仲間だと聞いてこのことを思い出した、彼等の前足は指がなく泳ぎやすい鰭になっているのだ。
「それじゃあ」
「もう骨格で指なかったよ」
「じゃあ解けないわね」
「抜くこともね」
このこともというのだ。
「無理だよ、あと昆布しか食べないから」
「それでなの」
「歯もなかったから」
「そうだったの」
「だから噛んで何かも出来なくて」
それでというのだ。
「尚更ね」
「助けられなくて」
「それでも助けようとして集まるから」
だからだというのだ。
「そこで余計にね」
「乱獲されたの」
「助けに来た個体も」
集まってくるがというのだ。
「戦えないのにそうするから」
「同じ目に遭って」
「どんどん減っていったんだ」
「それで二十七年でなのね」
「絶滅したって言われているんだ」
「酷い話ね」
「けれどね」
達川がかな恵を見て一華に話した。
「実際に北極も広いし」
「人も少ないから」
「だからね」
その為にというのだ。
「まだいてもね」
「不思議じゃないのに」
「もっと言えば俺としてはね」
達川は自分の考えもっと言えば望みも話した。
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