第19話 それでも私は、絶対に諦めない
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のであれば、もはや山籠りでもするしかないのだろうか。
そんな考えが脳裏を過ぎり、右腕に力無く視線を落とした時。遥花のその手が、隣の友人に握られた。
「……!」
ハッと顔を上げた彼女の視線が、友人の力強い眼差しと重なる。日頃から敬遠と好色の目で見られながらも、ひたむきに努力してきた遥花の姿を知っている友人は、己のか細い手で彼女の右手を握り締めていたのだ。
「……私だけじゃないよ、遥花」
「えっ……」
「警視総監の娘だとか、右腕が機械だとか、ライダーマンGだとか……そんなこと、どうでもいい。あんたは誰よりも頑張ってきた、番場遥花っていう『人間』。それが分かってる人は、私だけじゃない。あんたの右腕は、皆を守るための腕なんだってことも、怖くなんかないんだってことも……いつかきっと、皆にも分かる時が来るよ」
「……」
右腕の膂力を知りながらも、友人は恐れることなく遥花の手に指を絡ませている。そんな彼女の切実な訴えに耳を傾ける遥花の頬には、いつしか汗ではない雫が伝っていた。
「だから……まだ、諦めちゃダメ。ここで諦めたら、見れたかも知れない未来も、見えなくなっちゃう。私も、遥花に負けないよう頑張るから……私が勝つまでは、辞めないでよね。新体操」
「……うんっ!」
やがて彼女達は、互いに頬を濡らしながら。豊かな乳房を押し当て合い、抱擁を交わしていた。
これほど温かな心の持ち主が自分の近くに居てくれるのなら、自分はまだまだ頑張れる。そんな勇気が、遥花の胸に灯ったのである。
――それから、約1週間後。その友人はノバシェードのテロに巻き込まれ、選手生命を絶たれてしまった。
それでも彼女は、遥花が試合に出る度に車椅子に乗り、応援に駆け付けている。そんな彼女の諦めない姿は、遥花の心を絶えず突き動かしているのだ。
ノバシェードとの苦しい戦いが、どれほど長く続いても。その友情を頼りに、彼女は立ち上がってきたのである。
(……そう、だよね。私……まだ、諦めたくない。諦めたく、ないよっ……!)
再起不能になってもなお、自分を励まし続けてきた友人の想いを背負い。遥花は混濁する意識の中で、地面を掴み上体を起こしていく。まだ、戦いは終わってはいないのだ。
「はぁあぁあーッ!」
「ぬぅあぁッ! とぁあッ!」
「てぇえいッ!」
ぼやけた視界の向こうでは、ZEGUNをはじめとする最後の新世代ライダー達が、マティーニとの死闘を繰り広げていた。そこからは、自分が過去に助けた「怪人」の声も聞こえている。
(森里、さん……? そっか……あの人も、戦ってるんだ。これからの毎日を生きていく、皆のために……)
自分に亡き妹の影を重ねていた、悲しき怪人。かつてはノバシェードの尖兵だ
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