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展覧会の絵
第一話 キュクロプスその五
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「僕は冷たくそして暖かい」
「そんな手だね」
「わかったよ。じゃあ君はね」
「僕の手はどうかな」
「いい手だね」
 微笑んでだ。十字は和典に述べた。
「暖かいよ、それに」
「それに?」
「真面目だね」
 こうも言うのだった。
「君はとてもいい人だよ」
「ううんと。握手だけでわかったんだ」
「少しだけれど」
 だがそれでもだ。わかると答える十字だった。
「僕は握手やその人の目を見てね」
「それでわかるんだ」
「うん、その人のことがね」
 それでわかると和典に話すのだった。そしてだった。
 和典にあらためてだ。こう答えた。
「ではこれから部活でもね」
「うん、宜しくね」
 こうしてだった。彼は部活も決めたのだった。そこは美術部であり彼のこの入部もまた校内で話題になった。それはとりわけ女の子達の間でだ。そうなっていた。
 それで美術部の部室の前にだ。女の子達が集まりだ。こう部活に来た和典が言うのだった。
「ねえ、佐藤君入部したって?」
「それで何時部活に来るの?」
「ねえ、今日部活に来るのよね」
「私も入部していいかしら、美術部に」
 中には自分も部活に入りたいという者もいた。
 その彼女達にだ。和典は困った顔で応えた。
「あのね」
「あの?」
「あのって?」
「ちょっと僕はあくまで美術部員であって」
 それでだというのだ。
「佐藤君自身じゃないから」
「けれど同じ部活なんでしょ?だったらね」
「そうよ。知らない筈がないじゃない」
「それで何で知らないのよ」
「何でなのよ」
「だから。僕は佐藤君じゃないんだよ」
 さらに困った顔で言う彼だった。
「だから。どうしてもっていうんならね」
「どうしても?」
「どうしてもっていうんなら?」
「佐藤君自身に尋ねてよ」
 これが彼の言いたいことだった。そして実際に言ったのだった。
「そういう場合はね」
「何よ、冷たいわね」
「教えてくれてもいいのに」
「そうよ。勿体ぶらずにね」
「これ位のことは」
「だから知らないから」
 本当に知らないことだった。何故かというと彼は和典であり十字でないからだ。しかし今の女の子達は十字のことを考えるあまりそこまで見られてはいなかったのだ。
 その彼女達がだ。まだ和典に言おうとしているところにだった。
 彼女達の目当てである十字が来た。いつもの白い詰襟姿だ。
 その彼を見てだ。彼女達はその表情を一斉に明るくさせた。
 そしてだ。和典から瞬時に離れてだ。そのうえでだ。
 今度は十字自身を囲んでだ。そして彼自身に言った。
「ねえ、美術部に入ったのよね」
「それじゃあ
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