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展覧会の絵
第一話 キュクロプスその四

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 そしてそのうえでだ。また十字に言った。
「君、確かA組の」
「そう、この前転校してきたんだ」
「名前は確か」
「佐藤十字」
 一言でだ。彼は名乗った。
「これが僕の名前だよ」
「佐藤君なんだね。よかったらね」
「よかったら?」
「僕美術部だから」
 それでだというのだ。
「君を美術部に誘いたいけれど」
「高校の美術部に」
「うん、君は凄いよ」
 その絵を観てだ。確かに思ったことだった。
「だからどうかな。美術部で一緒にね」
「そうだね」
 その言葉を受けてからだ。十字はだ。
 ここでも淡々と、表情の見えない感じでだ。少年に答えた。
「それじゃあよかったら」
「うん、美術部に入ってくれるんだ」
「そうさせてもらうよ。それでだけれど」
「それで?」
「君の名前は」
 十字は少年の顔を見つつ彼に問うた。
「何ていうのかな」
「うん、僕の名前は田中和典」
 それが彼の名前だとだ。少年は微笑んで答えた。
「宜しくね」
「うん、それじゃあ」
 ここでだ。和典は。
 その右手を十字に差し出した。十字もそれに応えて。
 握手をした。その十字の手を握ってからだ。
 和典はだ。今度はこんなことを言ったのだった。
「あれっ、何か」
「どうかしたのかな」
「君の手って不思議だね」
 彼の手の感触を感じながらだ。ふと声の調子をあげて言ったのである。
「何かね」
「どんな感じかな」
「凄く冷たいけれど」
 だがそれでもだというのだ。その冷たさの中でだ。
「それと一緒に、底の方に暖かさがあるね」
「暖かさが」
「うん、冷たさはとても厳しい感じがあるけれど」
 彼の手から感じる冷たさはそうしたものだというのだ。
「それでも奥の方に」
「握手でわかるんだ」
「手を握ると感じたんだ」
 そこからわかったとだ。和典は述べる。
「それをね」
「手の感触なのかな」
「そうだよ。手の感触だよ」
「掌はもう一つの目だから」
 不意にだ。手を握り合ったままでだ。十字はこんなことを言った。
「そこからは色々なものがわかるんだ」
「掌からは」
「そう、わかるんだ」
 こう言うのである。
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