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雲は遠くて
改訂 186章 映画『クラッシュビート・心の神様』大ヒットする
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笑った。
信也の手もとには、この取材のために 用意した ノートがある。

「心の三部作のことですけど、これは、考えて こうなったのでは ()いんです。
まあ、心って、大切だなあって、おれは 思い続けてますけど。
ちょっと前に 永井 均(ながい ひとし)さんの『私・今・そして神』を読んだんです。
その中に『たとえば、ロボット工学者は、このロボットに心を与える能力がない。
ロボット工学のいかなる進歩を想定しても、原理的にない。
ロボットがどんな反応をするようになっても、心が付与されたか、
付与されていないかは、いつまでも 謎に とどまるからだ。』とか書かれてます。
まあ、そんなふうに言って、ロボットに心を与える仕事は、
『神だけがなしうる仕事』だと書かれていたんです。おれの誤読もあるかも 知れませんが」

 そう言って、信也は 明るく 笑った。

「心って、目には見えませんからね。あるんだか、()いんだか、よくわからないものです。
それは まるで 神様の存在のようなものです。
 寝ているときに 見る 夢があるじゃないですか。
あの夢って、心を よく (あらわ)してるって、おれは 思うんですよ。
だって 夢に 登場する人物は 何人も いるわけですけど、
その中の誰が、自分自身であるかっていうのは、わかるわけですよね。
それって、心があるから、わかることだと、おれは思うんです!」

「そうですよね。心があるから、自分が 夢の中にいても、
自分だと、迷いもなく、わかるんだと、私も 思います。
夢って、おもしろいですよね!」
 
 信也と 心菜(ここな)に、映画『クラッシュビート』の 取材をする 
週刊芸能ファンの 記者の 杉田 美有(みゆ)は そう言った。

「心については『心の中はどうなっているの?』という本で、スリランカ仏教界 長老の
アルボムッレ・スナマサーラさんが、こんなことを 序文で言ってます。
仏教の創始者のお釈迦(しゃか)さまに『唯一(ゆいいつ)絶対の神様は、誰ですか』と
質問があったそうです。それに対して
『お釈迦さまは、次のように答えました。
「この世の支配者は、心です。この世は心に動かされているのです。
この世のすべての生命は、たった1つ、心というものに屈服、服従しているのです」
この答えで、仏教の立場は明確です。神様を否定して、無神論・唯物論に
(おちい)って みだらな世界を認めることなく、事実を語っています。
「神様」という、何の証拠もない感情的であいまいな概念を、
具体的な「心」という言葉に入れ替えたのです。
ですから、俗っぽくいえば、一切の生命の神様が心なのです。
世界はどのように現れて消えていくのか。人の運命はどうなるのか、
自分とは何なのか
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